血管確保の成功率向上を目指したトレーニングプログラムは、新人看護師自身の録画を用いて実施され、人体への血管確保の実践録画による課題抽出やベテランナースによる教育的介入など5つのStepから構築している。また、新人看護師による血管確保の録画を分析した結果、静脈の径、表在性、直進性のいずれも問題のない、一見するとカテーテル留置に適切な静脈血管であるにもかかわらず、血液の逆流が緩慢であり、外針挿入に抵抗があり、内針抜去後の血液の逆流も緩慢な実施例があった。「カテーテルが留置された静脈血管に静脈弁が存在していた」との仮説が成り立ち、留置針穿刺の影響として以下3点の可能性が推測された。①穿刺時に静脈弁を傷つける。②外針が挿入困難もしくは外針が折れ曲がり血管確保が失敗する。③外針を留置後、静脈弁により薬液の希釈が妨げられ、静脈炎のリスクが増大する。そこで、静脈弁のアセスメント方法をトレーニングプログラムに導入した。本研究により構築されたトレーニングプログラムを用いて、集団比較実験デザインによる検証を行った結果、血管確保成功率の向上や失敗要因の改善が認められた。新人看護師の血管確保技術の特徴として、静脈血管の怒張および刺入部位の選定に課題があり、針先を静脈血管内に入れることが困難である傾向が示されたが、ベテラン看護師の介入後、針先を静脈血管内に入れる、すなわち留置針刺入時のフラッシュバックチャンバーへの血液逆流の遂行が有意に向上した。また、静脈内に内針が到達した後、外針の挿入および内針の抜去までの過程に血液の逆流が消失する類の失敗がみうけられたが、血管確保アルゴリズムなど活用し、ベテラン看護師が介入した結果、新人看護師の血管確保における内外針の操作に関わる判断および具体的な操作方法の理解が向上した。
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