平成26年度は、介護老人保健施設の看護職員を対象に認知症を合併する高齢慢性心不全療養者の疾病管理の実態について郵送による質問紙調査を行い、79名から有効回答を得た。心不全の悪化による再入院の割合は6割以上にみられ、それらの原因には、発熱54.4%、感染症50.6%が上位に挙げられた。一方、平成23年度の調査からは、在宅では独居による自己管理不足や老老介護、家族介護者の不在などから家族の理解不足、家族の協力・支援が十分に受けられないことが「塩分・水分制限の不徹底」「治療薬の内服不良」を生じ、再入院の原因となっていた。このことから、療養場所によって、認知症高齢者の再入院の原因は異なり、施設における慢性心不全の疾病管理は、呼吸器感染や尿路感染の予防等、感染予防を強化していく必要性が示唆された。 施設では、他職種との連携によって塩分・水分・活動の管理が行われ、服薬管理は比較的支援が容易であると思われた。認知症高齢者の慢性心不全の疾病管理のための支援マニュアルを72.1%が非常に必要・まあ必要と認識し、拒食、拒薬、寡動などの認知症が関連する症状の支援方法よりも、心不全の疾病管理に関する知識全般や、他職種と協働で疾病管理を行う方法など、心不全の疾病管理の一般的事項についてのニーズが高かった。一方、平成23年度の調査結果では、急性期治療を受ける認知症高齢者の慢性心不全の疾病管理では、治療やケアが円滑に行われることが課題となっていた。 これらのことから、認知症高齢者の慢性心不全の疾病管理では、慢性心不全の急性増悪期については、急性期の治療やケアが円滑に行われるための具体的支援方法を開発すること、また、施設療養等における慢性期では、感染予防対策を含めて、看護職員が心不全の疾病管理の一般的事項を理解するためのマニュアルの作成が必要であると考えられた。
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