研究課題/領域番号 |
23792578
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
武居 明美 群馬大学, 保健学研究科, 助教 (70431715)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | がん / がん患者 / 就業復帰支援 / 壮年期 / 看護モデル |
研究概要 |
平成23年度の研究計画に基づき、がん患者(がん体験者)への調査を実施した。がん患者が社会的活動を行うに至った経過を把握することにより、就業復帰につながる社会的活動の再開までに抱く困難や、その際の促進要因となった事柄の明確化を図ることを目的とした。社会的活動を積極的に行うがん患者10名(平均年齢66,9歳、男性4名、女性6名)を対象とし、面接調査を行った。その後、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法を用いて、分析を行った。その結果、がん患者が社会的活動を行うに至る過程は、がん告知に伴い生じる、がんへの恐怖や治療選択の苦悩、一人で抱え込む辛さからスタートしていた。これらの、がんであると知って味わう苦痛を乗り越えるために、外界との接触を求めることが、社会的活動への第1歩となっていた。また、がん体験者との交流により、自分だけが苦しいのではないという気づき、がんに対する考え方の広がりが得られ、本来の自分らしさを取り戻していた。これら一連の流れが社会的活動を開始するプロセスである。自分らしさを取り戻した後、がん体験から得た学びを感じることで、社会的活動を積極化させる感情が強まっていた。さらにがん患者は、がんであるがゆえに生じる、「再発に対する恐怖」を常に抱えていた。がん患者にとってこの不確かな状況はやむを得ないことではあるが、その後の就業への意欲や周囲の人々とのコミュニケーションに影響を与えることが予測されるため、壮年期がん患者の就業継続・職場復帰サポートシステムモデルでは、何らかの介入を行う必要があると考えられる。以上のことより、マイナスと理解されがちな「がんであると知って味わう苦痛」が、社会的活動を意識するきっかけとなっていること、がん体験者との交流を図ることが自分らしさを取り戻し、社会的活動の積極性を高める要因となっていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度末時点として、研究の進みがやや遅れている。その理由として、がん患者の就業復帰支援に関するニーズの高まりや、社会的注目度の増加が挙げられる。これに伴い、研究計画として思案したことの再考が必要となったため、本研究の独自性を明確にするための見直しを行った。 調査対象は変更しないが、壮年期がん患者の就業継続・職場復帰サポートシステムモデルを検討する際に、患者が本来持っている強みの評価や、強みを生かすためのサポート内容を盛り込むこととした。そのため、患者や体験者への聞き取りを強化し、調査を進めていく予定である。 その後、がん患者のニーズや、真に実現可能なシステムモデルを構築するための情報収集を進め、軌道修正を図っていることから、平成24年度においてはその遅れを取り戻すことが可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は、がん患者への面接調査を進めてきた。 平成24年度は、施設医療者、雇用者、地域医療者への調査をメインに置き、調査を進めている段階である。平成23年度の調査(第一段階)により明らかにした、がん患者における就業継続・職場復帰を促進・抑制する因子を活用し、施設医療者、雇用者、地域医療者への調査を進めていく。 サポートシステムモデルは、「がんの診断・告知から就業開始の時期」「就業後半年程度の適応の時期」に分け、サポートを行う予定である。より現実的で妥当性の高いモデルを作成するために、がん患者への調査結果や社会的ニーズや情勢を踏まえ、調査内容を柔軟に変化させながら、対象への調査を進めることで、モデルを作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、研究成果の国内学会発表や論文発表を予定している。具体的な発表内容は、平成23年度の研究成果であり、がん患者が社会活動を始めるに至った経過を質的に分析したものである。 また平成24年度は、2年に1度開催される国際がん看護学会の開催年である。チェコで開催されるが、この国際学会に参加し、がん患者の就業復帰支援に関する世界的情報や研究の進捗状況等を把握し、本研究の遂行に活用する。 データ数が急増することが予測されるため、データ分析補助者への謝金が多く必要になることが考えられる。
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