研究課題/領域番号 |
23792580
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大江 真琴 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60389939)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 糖尿病性足潰瘍 / 皮膚温 / 評価スケール |
研究概要 |
本研究の目的は、糖尿病性足潰瘍に特化した創部を評価するためのスケールを開発することである。特に、皮膚温測定を組み入れることで、肉眼的にはとらえられなかった深部感染を反映させ、妥当性の向上を図ることが特徴である。しかし、これまでに糖尿病性足潰瘍の治癒過程および皮膚温の所見を明らかにした報告はなく、今年度はこれらを明らかにした。糖尿病性足潰瘍の治癒過程は、19名26部位の潰瘍の経過をスケッチし、言語化した。その結果、深さ、創縁の性状、壊死組織のタイプ、壊死組織の範囲、感染/炎症の5つのカテゴリーが抽出された。特に、神経障害性の足潰瘍では、創縁の性状に角化の強い皮膚が出現し、上皮化すること、血管障害性の足潰瘍では、創縁に赤いリング状の変化を伴うことが明らかとなった。これらについては、5月にEuropean Wound Management Association にて発表する予定である。また、これらの知見をもとにスケール案を作成し、写真判定による妥当性の検証を行った。皮膚温所見に関しては、糖尿病足病変(足部潰瘍8部位、足部壊疽3部位、蜂窩織炎3部位)を有する10名を対象にサーモグラフィを撮影した。MRIでは骨髄炎のみ合併3部位、軟部組織炎症のみ合併4部位、骨髄炎と軟部組織炎症の合併3部位、骨髄炎・軟部組織炎症合併なし4部位であった。骨髄炎症例では足関節まで皮膚温が上昇していた。骨髄炎を標的疾患、足関節までの皮膚温上昇を陽性とした場合の感度は66.7%、特異度100%、陽性適中率100%、陰性適中率80.0%であった。本結果は7月に日本下肢救済足病学会にて発表する予定である。なお、骨髄炎所見に関するケースレポートをJournal of Wound Careに投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は糖尿病性足潰瘍の治癒過程の明確化を目標としていた。症例数は予定より少なかったものの、カテゴリーの抽出までできており、初年度の目標は達成できたと考え、概ね順調に進展していると判断した。ただし、症例数が現時点で19名であることから、飽和化するまで症例数を増やし、コアカテゴリーを導く必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られたカテゴリーをもとに、症例数を増やして検討する。結果が飽和化した時点で、スケール案を見直し、信頼性と妥当性の検証を行う。皮膚温画像のスケールへの導入を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
スケールの信頼性と妥当性の検証には、専門家の協力が必要であり、謝礼を支払う必要がある。また、得られた知見を学術集会や投稿論文を通して発信するために、旅費や英文校閲費が生じる予定である。
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