本研究の目的は、糖尿病性足潰瘍に特化した創部を評価するためのスケールを開発することである。特に、皮膚温測定を組み入れることで、肉眼的にはとらえられなかった深部感染を反映させ、妥当性の向上を図ることが特徴である。昨年度までに糖尿病性足潰瘍の治癒過程および皮膚温の所見を調査し、報告してきた。今年度は、症例数を追加し、糖尿病性足潰瘍の治癒過程を飽和化すること、深部感染以外に皮膚温に影響する要因として考えられた靴の影響を確認することを目的に調査を進めた。 糖尿病性足潰瘍の治癒過程については、13部位を追加し、これまでに明らかとなった深さ、創縁の正常、壊死組織のタイプ、壊死組織の範囲、炎症/感染の5つのカテゴリの飽和化を確認し、皮膚科医によるスーパーバイズを受け、創部評価スケール案の提示に至った。本研究は、5月にオーストラリアで行われるthe 10th National Australian Wound Management Association Conference 2014の発表に採択されており、その後、論文投稿する予定である。 皮膚温所見については、糖尿病患者30名を対象に足部皮膚温と靴との関係を検証した。非糖尿病者で検討した従来の報告と異なり、靴だけでなく非潰瘍性病変部の炎症と思われる所見や、靴の因果関係は不明であるが前足部のみ上昇するパターンが観察された。糖尿病患者の場合、靴以外の要因が皮膚温に影響している可能性があり、血管障害や神経障害など、糖尿病患者特有の要因を加えて分析し、論文発表する予定である。
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