研究課題/領域番号 |
23792582
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
大日向 陽子 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (40570263)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患患者 / 食生活 / 心のゆとり |
研究概要 |
本研究の構想は,重症患者の食のニーズを客観的評価と主観的評価の側面で捉え,縦断的に調査を実施し患者の食のニーズの変化過程を明らかにすること,患者の食のニーズを充足し栄養状態改善に向けた看護師の役割を示唆することであった。文献や研究フィールドにおける対象患者の特徴を検討した結果,患者は一時的な絶食に対し「身体回復が優先」,「短期間であれば我慢できる」との報告や,主観的・客観的評価をタイムリーに照らし合わせた評価が困難であること,倫理的側面から調査協力者の同意を得られにくい状況であること等から研究導入が困難であると判断し,対象者をより食と密接な関係があり,病状によって食事形態・摂取方法が変化する炎症性腸疾患患者に変更することとした。 炎症性腸疾患患者は再燃・寛解を繰り返し,症状に応じた食事形態・栄養療法が必要であり,QOL維持・改善のためにも治療と食生活のバランスが非常に重要となる。対象者変更に伴い,今年度は炎症性腸疾患患者の食の特徴・課題について国内外の文献検討を実施した。その結果,再燃への恐怖による食欲低下,または食事を制限し焦りや挫折感を感じやすく,食事療法の継続に支障をきたしていた。また食事満足度とQOLには強い関連があった。食事摂取実態調査では,エネルギー,蛋白質摂取量は国民摂取基準値と差は少ないが,栄養素漏出,消化・吸収能の低下,発熱・炎症による代謝亢進・需要量増大により体重減少や低アルブミン血症の患者が多く,葉酸,水溶性ビタミンであるビタミンC・E摂取量の低下が報告されており,自覚症状と食事との関連が確認できた。ニーズ(欲求)は心理的安定・安寧と関連があることより,ニーズの主観的評価を心理的に安定し心のゆとりがある状態で捉えることにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は,文献等で調査項目の妥当性検証し,プレテイストを実施・内容修正を行う予定であったが,文献・研究フィールドの対象患者の特徴を検討し吟味した結果,患者は一時的な絶食に対し「身体回復が優先」,「短期間であれば我慢できる」との報告や,主観的評価と客観的評価をタイムリーに照らし合わせた評価が困難であること,倫理的側面から調査協力同意を得られにくい状況であること等から研究導入が困難であると判断し,調査対象者を食と密接に関係する炎症性腸疾患患者に変更し,文献検討に時間を要したことより当初の計画より遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,調査対象者を炎症性腸疾患患者に変更したことに伴い,先行研究(文献)を参考に,調査項目の精選,調査方法の見直しを実施する。ニーズ(欲求)を心のゆとりとして調査するため,尺度開発者に「心のゆとり感尺度」の使用許可を得る。対象者は,患者会参加者・病院外来患者を予定しているため,選定と承諾を得て所属する大学倫理委員会へ書類を提出する予定である。倫理委員会で承諾が得られた後,本調査実施前に,20歳以上の一般住民100名を対象に「心のゆとり感尺度」を用いた調査を実施し,「心のゆとり感尺度」の信頼性・妥当性を検証し,調査項目の精選を行う。 本調査の対象は炎症性腸疾患患者約30名である。調査内容は(1)基本属性(既往歴,薬物治療内容,身長,体重,BMI,身体症状:消化吸収障害に伴う下痢・腹痛,発熱,貧血などの症状を含む,活動性評価:IOIBDスコア),(2)食事摂取状況(食事摂取経路(経口・経腸),栄養素摂取量(PFC比/SMP比を含む)食品群別摂取量,食事形態(成分栄養・半消化態栄養も含む),食欲等),(3)血液生化学検査(TP/Alb/T-cho/LDL-cho/HDL-cho/n-3系脂肪酸/Hb/Ht/RBC/WBC/CRP/Fe/Zn/Cu/ビタミンB12/葉酸/赤沈等),(4)心のゆとり感である。調査方法は,上記(1)~(4)の調査項目を縦断で3回(調査開始時:1回目,4週後:2回目,8週後:3回目)実施する予定である。栄養素摂取量に関しては24時間思いだし法を用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用計画としては,調査実施に関わる消耗品(調査用紙・プリンターカートリッジ,USBメモリー等),統計分析用ソフト(SPSS)購入,血液生化学検査を(株)SRLにTP/Alb/T-cho/LDL・HDL-cho/n-3系脂肪酸/Hb/Ht/RBC/WBC/CRP/Fe/Zn/Cu/ビタミンB12/葉酸/赤沈等の採血検体を依頼する予定である。また,関連学会(静脈経腸栄養学会・臨床栄養学会・日本看護科学学会等)での情報収集や発表旅費,研究関連文献・書籍の購入や,調査開始に伴う調査協力者への謝金にも使用する予定である。
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