研究概要 |
IBDは性格特性上ストレスを抱えやすい。根本的な治療法はなく消化・吸収能に準じた食事摂取が必要であり食事療法は治療の一端を担うが,再燃による苦痛体験から食べることへの恐怖を感じる等精神的苦痛が大きく食生活も乱れやすいとされる。ストレスと再燃の関連も報告されているため今回ストレスと密接な関連のある心のゆとりに着目し心のゆとりが食生活,身体状態に及ぼす影響について調査を計画した。心のゆとり感尺度開発者に使用許可を得た後,大学医学部倫理委員会の承認を得て調査を開始した。 調査プロトコール(計3回)のうち,1回目終了患者は計26名(CD13名,UC13名)である。対象者の心のゆとり感尺度α係数は.955,各下位尺度(「心の充足・開放性」「切迫・疲労感のなさ」「対他的ゆとり」)のα係数は.885.~926であった。stress response scale-18にて構成概念妥当性の確認を行った。CD群は「充実感を感じる」「生活に満足している」等がUC患者より有意に低値を示した。食生活は, 24時間思いだし法を用い調査した。CD群の1日脂質摂取量, PUFA摂取量,n-6PUFA摂取量,n-3PUFA摂取量がUC群より有意に低値であった。CD群のn-6/n-3PUFA比は6.0±2.6,UC群は6.2±2.9であった。身体状態ではCD群のPUFA, n-6PUFA, n-3PUFA, DHAがUC群より有意に低値であった。CD患者のn-6/n-3PUFA摂取量と血中n-6/n-3PUFAに正相関(r=.586,p<0.05),UC患者の脂質摂取量,MUFA摂取量と血中MUFAに正相関(r=.614,r=.641,p<0.05)があった。1回目調査終了時点では,CD患者のn-3PUFA摂取量が低値, n-6/n-3PUFA量が高値のため,n-3PUFA摂取が課題であることが明らかになった。
|