最終年度は、血液疾患により造血細胞移植(以下、移植)を受けた外来通院中の患者を対象に、移植を決定していく過程において、医療者との関係や家族の意思が患者の意思決定にどのような影響を与え、患者はそれをどう認知していたのかなど患者を取り巻く他者との関係性や患者個人の特性も踏まえ、病気の診断から移植の決定に至るまでの患者の意思決定プロセスを提示することを目的とした面接調査を行った。 研究参加を承諾した対象者は5名であった。面接時の対象者の年齢は平均44歳(21~64歳)で急性骨髄性白血病が3名、急性リンパ性白血病が1名、骨髄異形成症候群が1名であった。移植方法は、骨髄移植が3名で残り2名は末梢血幹細胞移植であった。面接調査より得られたカテゴリーは【突然の衝撃】【未知の世界】【移植以外の選択の余地が無いことへの苦悩】【現実味を帯びた移植】【受容できない移植】【家族同士の気遣い】【移植に向けての奮起】【迷いのない移植を決意】【医療者とのパートナーシップ】の9カテゴリーと2概念はカテゴリーと同等の説明力をもつ概念として〔他の患者との比較による心の安寧〕〔移植を絶対視しない医療者による安心感〕が生成された。移植の必要性は理解できていても、心情としては簡単に受容できない患者が多い。しかし、家族や医療者とのかかわりを通して、移植の必要性を理屈で解る理解の状況から、納得を伴った了解に至っていた。心理的に不安定な時期から徐々に前向きに移植を捉え、決意を固めていくためには、患者の揺れ動く意思決定プロセスを理解したうえで患者の決定を支持する必要があり、内発的動機付けに基づく決意がより治療をスムーズに進め、その後の回復への経過も異なると考えられた。 今後の課題として、患者の意思決定の実際とQOLとの関連を明らかにし、情報提供のあり方や自己決定をどのように促進することが可能か検討していく必要がある。
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