平成26年度の研究目標は、基礎的研究結果のデータを分析と、学会での発表、ストレスマネジメントの具体的な実施であった。 基礎的研究結果のデータ分析に関しては、追加で検体の分析を行い、生理学的データと主観的データ(尺度)の分析を行った。その結果、クローン病患者には、HPA-axisの歪みがみられ、ストレスに適応できていない可能性が示唆された。さらに主観的データから、クローン病患者の性格傾向は、責任感が強く協調性が高いが、自己評価が低く引っ込み思案であることが示唆された。これは、クローン病患者がうつ傾向になりやすいことを示唆している。総合して考察すると、クローン病患者はストレス不適応を起こしている要因には、HPA-axisの歪みのみならず、認知の歪みも関連していると思われる。この結果は、平成26年4月に行われた日本消化器病学会で発表した。 前年度の研究結果では、主に生理学的データをもとにストレス不適応についての分析を行ったが、主観的データのさらなる分析により、生理学的データの分析結果を裏付ける結果となった。また、主観的データの分析結果から、クローン病患者には身体的な介入のみならず、認知行動療法による精神的な介入も必要であると思われる。具体的には、リラクセーションやアサーショントレーニングといった行動的技法と、認知の偏りの是正や、スキーマの修正といった認知的技法があげられる。ストレスマネジメントの具体的な実施について、上記のような認知行動療法を取り入れた介入を予定していた。しかし、ストレスマネジメントの実施には数週間の介入期間が必要であり、クローン病患者の参加同意が得られず、実際に介入するまでには至らなかった。
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