「高齢がん患者の生活史に注目した看護介入プログラム」の開発において、はじめに生活史の活用に着目した。生活史はがん領域において、体験過程の意味づけを明確にする手法として活用されていた。これは、高齢がん患者で生活史を活用することは、経験の意味づけだけでなく、長い生活史より得た英知を持つ高齢がん患者は生活史自体が強みの部分を意図的に活用することに繋がると考えられた。このことから、高齢がん患者の生活史を活用することは、高齢者の持てる力を生かした有用性ある介入方法の1つであることが明らかになった。次に、治療過程の高齢がん患者に面接調査を行い、対象者の実態把握を行った。その結果、高齢がん患者の現状では、がん治療を受ける高齢者は身体的・精神的・社会的背景より虚弱な立場にあり、治療や自己の状態に対して思うようにならないような状況下で治療を受けていることが明らかにされた。また、面接調査の中で、今までの生活経験を糧にして、現状を受け入れようとすることも語られており、生活史を活用した介入を行うことで、患者自身が現状を受け入れやすい状況をもたらす効果があると考えられた。更に、身体的機能低下と共に、治療に伴う副作用に対して受容し、治療を継続させていくためには、治療に対する納得がカギになることが示唆された。また、この納得はアウトカム指標として用いることができ、介入の効果を見る指標としても検討する必要性が示唆された。今後は、生活史の活用と納得によるアウトカムに関する実際の介入効果を検討していく必要がある。
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