平成25年度は、胸部大動脈瘤手術患者の回復促進のための看護支援内容とその時期の検討、回復を評価する質問紙の内容の精錬を行った。 前年度までの成果から、Leventalらの自己調節モデル(self-regulatory model)の病気認知の考え方を元に作られた、病気認知質問紙(The Illness Perception Questionaire:IPQ)を胸部大動脈瘤手術患者にも適応可能であることが示唆された。回復評価には、この質問紙を活用しつつ、病気認知だけではなく日常生活にも影響する様々身体症状の質問項目を追加することで評価可能であると考え、質問項目の内容、表現の精錬を行った。身体症状は、術式、年齢、性別などで特徴的な項目を盛り込みながら、平成23年度の成果から出てきた「回復感に関わる要因」を測定できるように検討を行った。 回復促進のための看護支援は術後から行うものを想定していたが、術後の回復は術前からの病気認知も大きく影響するため、先行研究(三浦,2010)から、術前の患者の実態を病気認知の枠組みから再検討した また、現在、心臓血管外科術後患者の看護外来を行っている専門看護師から情報提供を頂き、本研究課題の回復促進看護支援プログラムの内容と実施時期に関する助言を得た。頂いた助言と今までの分析結果に基づき、身体的回復を導くために、今現在の症状の説明と回復の見通しを示す情緒的支援、手術体験への肯定的な受け止めを導く情緒的支援、病気認知に応じた療養に関する教育的支援の3つを柱とした支援が必要であると判断した。支援時期に退院3か月までの目安との助言は、研究者の先行研究で示された内容と一部合致しており、実現可能性への手ごたえを得ることができた。しかし、合併症の種類、症状の状況によっては、退院後6か月までの支援が必要であり、今後の検証が課題である。
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