HIV陽性者(以下陽性者)の療養場所とその移行に関するニーズや不安の構造を把握することを目的とした。3年間に渡り、1)エイズ拠点病院に勤務する医療従事者、2)要介護状態にある陽性者および家族、3) 要介護状態にある陽性者へのケア経験のある在宅サービス提供者および入所施設スタッフへの聞き取り調査を行った。最終年度は陽性者受け入れ経験および標準予防策に関する施設への無記名自記式質問紙法による調査を実施した。 陽性者受け入れ前には不安が存在していたが、研修の実施により知識不足や不安を軽減すること、HIV/AIDSへのケア経験者がいること、フォローする医師の確保がなされることで陽性者受け入れが推進されていた。受け入れ後、陽性者と関わった経験が「身構えなくていい」という思いや受け入れるには勉強するしかないという考えに至っていた。地域での受け入れ推進には研修の企画や医師の確保する役割を担う窓口機能を有するキーパーソンの存在が重要であるとともに、受け入れてから陽性者支援のあり方を学ぶことで陽性者の療養場所移行が可能であると考えられた。しかし陽性者本人や家族の視座から、転院先や受け入れ先を探すことの障壁や介護を抱え込んでいる様子が窺えた。これには地域で生活する場合、介護保険認定を受けるとケアマネジャーがキーパーソンとして存在するが、介護保険非適用の場合現行の保険制度においてキーパーソン役割を果たす存在がいないことが課題としてあげられた。
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