研究課題/領域番号 |
23792633
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
吉田 倫子 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30463805)
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キーワード | 母乳 / 乳腺炎 / 味 / 乳児 / 授乳 |
研究概要 |
母乳育児支援に関わる助産師の経験知の中に、母親が乳腺炎を起こす予兆として、乳児が授乳を嫌がる行動を示すという現象がある。過去の我々の調査において、乳腺炎および乳腺炎の前兆の母乳で、母乳の味が変化していることが明らかとなり、乳児が示す授乳拒否の一因であることが示唆された。そこで、本研究は、乳腺炎の母乳で起こる味の変化に関係する成分を分析し、その成分を検知することにより、乳腺炎の予知が可能であるかを検証することを目的としている。成分分析は、味分析後の母乳サンプルについて行い、アミノ酸、糖質、ミネラル、脂肪酸の濃度を測定した。 先行研究において行った味覚センサによる味分析では、酸味・塩味・旨味・苦味・渋味の変化を測定した。その結果、正常な母乳と乳腺炎の母乳において最も特徴的な変化が認められたのは旨味であったため、成分分析もアミノ酸に加え、その他の旨味成分といわれるアミノ酸関連物質やヌクレオチドのグアニル酸とイノシン酸について行った。分析の結果、アミノ酸ではセリンとアスパラギン酸が、アミノ酸関連物質ではエタノールアミン、アンモニア、タウリンが関与しており、ヌクレオチドの関与は認められなかった。 また、味覚センサによる味分析において、乳児の授乳拒否が増える乳腺炎の母乳では、旨味が増加する一方で、苦味や渋味といった不快な味が減少するという結果も得られているが、成分分析の結果からその原因を説明するデータが不足しており、可能性のあるミネラルについて、検討を重ねている。 もう一方で、論文の中心的なテーマとして、児が感じる母乳の味覚についての考察が不可欠となるため、今後の調査の中に、母乳を飲む児の快・不快を脳波を用いて客観的に評価する内容を盛り込むこととした。 次年度は、さらなるデータの補充、整理と解析を基に論文作成を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度より、先行研究の味分析に基づいて、味に関係する成分の分析を計画的に進めてきた。その結果、乳児の授乳拒否が増える乳腺炎の母乳では、旨味が増加するという現象の説明を成分分析の結果を基に行うことができ、分析項目も旨味関連物質と考えられるものの範囲を広げて行うことで、より説得力のある結果を得ることができたと考える。この点に関しての達成度は高い。 しかしその一方で、我々の先行研究の中には、乳児の授乳拒否が増える乳腺炎の母乳では、苦味や渋味といった不快な味が減少するという結果もあるため、こちらの説明も必要であるが、これまでの成分分析の結果からは説明できるデータが十分ではない。可能性のあるミネラルについて分析方法を変えて、再検討を図っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの計画では、味に関係する成分の分析結果が得られた後に、それを基に新たな研究対象に対して、3か月間、前指法的にモニタリングをし、乳腺炎の予知が可能かを検証しようと考えていた。しかし、ここまで分析を続けてきたが、予知の検証に役立てられる成分が十分に発見できたとは言えない。よって、研究の方向性を再検討して、この研究の本来の中心的なテーマである、児が感じる母乳の味覚についての客観的評価を加えることとした。 児の授乳拒否の要因を推測する場合、児が母乳を飲んだ時にどのように感じているのかを推測できれば、本研究の発展に有益と考える。今回、脳波測定のソフトを購入したので、授乳時の児の脳波のパターンから、授乳拒否をする児の快・不快についての推測が可能かを検討する。この結果から、乳児が示す授乳拒否と母乳の味との関係が明らかとなり、乳腺炎の予知に役立つ情報が得られると考える。 以上より次年度は、新たな計画を加えて、データのさらなる補充、整理と解析を基に、論文を完成させたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画に基づいて、ここまで分析を続けてきたが、予知の検証に役立てられる成分が十分に発見できたとは言えないため、研究の方向性を変更した。そのため、今回研究を延長し、予算も、新たな研究計画のもとに必要分をH25年度に残したため残額が生じている。 H25年度は、執筆中の論文を完成させ、英訳して投稿・発表する。よって、英訳・投稿費用、発表とそれに伴う旅費が必要となる。また、今後の調査として、これまでの計画に加えて、授乳中の児の快・不快を脳波を用いて客観的に評価することも合わせて調査を進めるためにも予算を使用する。
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