研究課題/領域番号 |
23792636
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
國清 恭子 群馬大学, 保健学研究科, 講師 (90334101)
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キーワード | 出産体験 / 尺度開発 / 帝王切開分娩 / テキストマイニング |
研究概要 |
平成24年度は、尺度開発にあたり、経腟分娩と帝王切開分娩を一緒に扱えるか、分けることが妥当かのエビデンスを得るために、帝王切開分娩した母親に実施した出産体験に関する質問紙調査について分析を進めた。文章完成法テストを用いて収集した85部の記述データをテキストマイニングの技法を用いて分析を行った。 「お産のとき、私は」という刺激語に対する回答について、単語頻度解析の結果、「子ども」が一番多く、「産声」など子どもに関連する単語が上位であった。また「緊張」「安心」など出産時の心理的変化を示す単語や、「麻酔」「手術」など帝王切開そのものに関連する単語が上位あった。係り受け頻度解析では、「子ども-会う+できる」や「顔-見る」の他、「産声-聞く+したい」など産声に関する体験が上位を占めていた。他に、「麻酔-効く」や「出す-感じる」、「出産-感じる+ない」(出産したという感じではなかった)など、身体感覚に関連した表現も上位にあった。初経別かつ帝王切開の経験別の偏りのある表現は、初産婦は「産声-聞く+できない」であり、帝王切開経験のある経産婦は「子ども-会う+できる」であった。さらに、帝王切開の予定・緊急別にみると、予定帝王切開をした者は、「子ども-会う+できる」「産声-聞く+できる」「顔-見る」などの表現を多用しており、出生時の子どもに関する話題が多かった。緊急帝王切開をした者は、「麻酔-効く」という表現を多用していた。 手術というイメージの強い帝王切開ではあるが、児と対面できた実感など分娩様式にかかわらない出産としての側面と、手術としての側面を有していることが明らかになった。経腟分娩の出産体験と共通する概念を中核におき、帝王切開ならでは身体感覚についてはオプション項目で対応するなどの工夫をすることにより、分娩様式によらず使用できる包括的な尺度開発の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
文章完成法テストを用いて実施した質問紙調査のデータ分析に際しては、テキストマイニングの技法を初の試みで用いた。研究目的に沿って有用な結果を出すためには、基本的な手法に加えて、より複雑で段階的な本格分析を行う必要があったため、使用したテキストマイニング分析のソフトの活用方法についての研修や、個別コンサルティングを複数回受けた上で分析を進めたため、予定より期間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
帝王切開分娩をした母親の出産体験に関する調査では、麻酔に関連した身体感覚についての体験が主要な体験の一つとして明らかになったが、経腟分娩であっても麻酔を用いた無痛分娩をする例も増えている。また、陣痛は耐えることを良しとする価値観がある一方で、痛みを味わう必要はないとする価値観の女性もいるとの報告もあり、陣痛や和痛のとらえ方は多様化している。これまで発表されてきた日本の出産体験の満足感尺度はそのような多様性は加味されていないため、本研究で開発する尺度では考慮していきたい。そこで、尺度項目の選定に先立ち、無痛分娩をした女性の体験や海外論文も含めて陣痛のとらえ方について文献検討を行う。 その結果も踏まえて、尺度を構成する質問項目案の抽出を目的とした質問紙調査を行い、多様化した出産に対応する尺度の質問項目の抽出、パイロットスタディー、予備尺度の作成と信頼性・妥当性の検証を進めていく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、質問項目案の抽出を目的として質問紙調査を実施し、尺度項目案の決定、パイロットスタディーの実施を目指す。研究費は、まず質問紙調査の調査票準備、回収データの整理および入力を依頼する研究補助者の謝金と、質問票作成や生理に必要な用紙・封筒・ファイル等の消耗品や回収の際の通信費に充てる。また、今年度の調査でも用いるテキストマイニング分析について、専門家の個別コンサルティングを受ける。 旅費は、平成24年度の調査についての学会発表および情報収集のための学会参加に使用する。 その他、基盤研究の論文作成および投稿の費用、消耗品費(関連文献含む)として使用する予定である。
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