本研究の目的は、早産児を出産した母親が、母乳育児を通して、親役割を獲得していく過程を明らかにし、母親に対する母乳育児支援の方向性を考察することである。 平成24年度は、早産児を出産した母親の母乳育児や親役割獲得過程に関連する文献の検討とともに、前年度までに得られた母親6名の調査結果の分析を実施し、早産児を出産した母親が、母乳育児を通して親役割を獲得していく過程を明らかにし、母親に対する母乳育児支援の方向性を考察した。 その結果、母親は、早産にも関わらず【母乳が出る自己と出会う】ことを通して、搾乳を開始し、その過程で、母乳にこだわるからこそ【母乳を出し続けなければならない自己と格闘する】状況にあった。直接母乳ができるようになると【母親としての自己像に接近していく】。さらに、児のいる生活が身近に感じられ、児を育てる自信がないなど、【退院を目前に母親である自己がゆらぐ】体験をし、これまでの母乳育児を自分なりに意味付けることで、【自己肯定感を得てわが子を育てる決意をする】に至っていた。このような過程では【母乳を出し続ける力が引き出される】、【母乳を通して成長する児に鼓舞される】、【直接母乳を通して絆が深まっていく】、【母乳育児が空想から現実になっていく】、【児がかけがえのない存在になっていく】、【喪失体験にとらわれ続ける】、【医療者とともに自己の力を発揮していく】、【周囲の存在を自己の支えとしていく】体験があったことが明らかとなった。 母親に対する看護支援の方向性としては、母乳育児の過程で母親が喪失体験と向き合い、現実を受け入れていく過程に寄り添うこと、母親の母乳育児開始の動機付けとして、出産後早期に搾乳に介入すること、母親のゆらぐ気持ちに寄り添い、母乳育児を母親なりに意味付けられるような関わりをすること、母親の成長を促進させる家族を含めた支援をすることの重要性が示唆された。
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