本研究は、救急場面において多くの看護師が感じている家族援助の困難さの構造を明らかにし、救急患者の家族に対する援助の困難さを克服するための教育プログラムを作成することを目的にしていた。 救急外来において、患者・家族と看護師を含む全医療者の言動を参加観察し、参加観察後に家族と看護師にインタビューを行った。状況が変化した場面ごとに患者・家族・看護師それぞれの関係を分析した。その結果、その場にいる全員が予測する流れに沿って事態が動くように作用している場合は、家族と看護師がともに満足を得ていたことが明らかになった。経過が見通せず、待機の状況が続くと、看護師は苛立ちを感じたり、患者・家族に苦痛を与えたと悔やんだりしていたが、看護師に気にかけてもらっていると家族が認識できていた場合は、家族は看護師の関わりを好意的に評価していた。しかし、家族が不満を感じていても、それを医療者に直接訴えるこがほとんどなかったことも明らかになった。 今年度は、家族援助の困難さの構造をさらに考察するため、患者・家族と看護師を取り巻くシステムに関するインタビューを、救急医療施設の看護管理に携わる看護師に実施した。その結果、患者・家族の特性をふまえて個々の看護師の能力を効率よく発揮するためには、医療チームにおける中堅看護師の役割と責任が大きいことが明らかになった。そのため、中堅看護師に対するサポート体制の強化や適切な実践評価、および中堅看護師を対象とした教育プログラムの構築が必要であることが示唆された。
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