現時点では日本において有用なてんかん児対象のQOL測定尺度が存在しない。しかしてんかん児のQOL向上のためにも小児てんかんに特化したQOL測定尺度が必要であり、オーストラリアで開発され、以降数か国ですでに言語翻訳がなされ実用化されている「てんかんをもつ子どものためのQOL尺度(QOLCE)」に着目し、その日本語版(QOLCE-J)の開発を行った。 国際ガイドラインに沿って日本語版を作成し、4~15歳の外来通院にて治療中のてんかん児の保護者から278例の回答を得た。QOLCE-Jの16のサブスケールの内的整合性は「憂鬱」が低かった以外は確保され、またQOLCE-J全体のα係数は高く、再テスト法における級内相関係数も高値で信頼性が十分であった。またサブスケール間の関連においては、認知や情動に関する領域、ならびにこれらと「行動」との間で高い正の相関が認められたが、それ以外では中程度かそれ以下の関連であった。また外的基準として用いたSDQのサブスケールとの間においても相関が認められ、基準関連妥当性が確認できた。トータルのQOLCE-Jスコアとてんかんの医学的状況との関連を検討したところ、発作初発年齢、発作状況、ADL、抗てんかん薬の副作用症状と有意な関連が認められた。QOLCEは治療抵抗性のある児に用いられてきたが、本研究のでは抗てんかん薬の副作用症状など発作間欠期の影響が認められたことから、本尺度はてんかん発作がコントロールされている子どもにも有用であることが示された。 以上より、QOLCE-Jの信頼性・妥当性が認められ、日本のてんかん児のQOL測定尺度として実用可能であることが明らかとなった。 最終年度には小児てんかん診療において幅広く活用されるために学会発表および論文投稿を行い、以降各医療機関からの問い合わせに応じて本質問紙の配布を行っており、今後の質問紙の普及が期待される。
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