ペアレントトレーニング(PT)とは、発達障害児の行動に対する適切な対応(PTの手法)を、保護者[ペアレント]が、習得するための訓練[トレーニング]である。しかし、PTの手法は、教育現場などの子ども集団では実践しにくいことが指摘されていた。そこで、研究代表者らは、教師や保育士などを対象とした新たなPT(支援者を対象としたPT)を開発し、子ども集団への有用性を実証した。これにより、保護者に限定されていたPTの適用範囲が拡大し、子どもに携わる支援者への適用が可能となった。そこで本研究は、発達障害児や精神障害者を支援する看護師に着目し、PTの手法を応用した看護師の支援技術を開発、さらには、開発した支援技術を習得するためのトレーニングプログラムを構築することを目的とした。 今年度は、看護師へのインタビュー調査、行動調査、メンタルヘルス調査を実施した。インタビュー調査は24名に実施し、録音データから逐語録を作成して質的に分析した。適応行動を増加させる看護師の多くが、日々の看護の中で、患者との信頼関係の構築に努め、意識的に肯定的な言葉がけ(ほめ言葉を含む)をしていた。昨年度の調査では、日々の看護において「無視する手法(相手にしない・待つ)」が応用実践しにくいことが懸念されたが、調査の結果、不適応行動への良好な対応の多くが、「無視する手法」を応用実践した対応であった。また、看護師が普段使用しているほめ言葉を約300抽出し、20のカテゴリに分類した。さらに、行動調査では、385の対応場面から、適応行動を増加または減少、不適応行動を増加または減少させる看護師の対応をそれぞれ抽出した。 看護師のメンタルヘルス調査では、心の健康度と疲労度を調査した。結果、心の健康度が良好な看護師が約3割、心の疲労度が高い看護師が約5割であった。
|