研究課題/領域番号 |
23792681
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
竹原 健二 独立行政法人国立成育医療研究センター, 研究所成育政策科学研究部, 研究員 (50531571)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 産後うつ / 立ち会い出産 / 縦断研究 |
研究概要 |
本研究班は、パートナーが出産した直後の男性を対象とした縦断研究の実施を通じ、産後の男性の精神的な健康状態に関する実態を把握することを目指している。平成23年度は(1)縦断研究の計画立案・実施準備、(2)立ち会い出産をした男性を対象とした質的調査の実施、(3)男性の産後うつに関するシステマティックレビューの実施、の3つをおこなった。それぞれの活動の主な成果は以下の通りである。(1)縦断研究の研究計画書の原案の作成、使用する心理尺度の選定をはじめとする質問票の作成、調査協力施設への事前の打ち合わせなど、研究の実施体制の整備を進めた。(2)立ち会い出産をした男性10名を対象に聞き取り調査を実施した。その結果、立ち会い出産をした男性は、妊娠・出産のことがよく分からないがゆえに、恐怖感にも似た強い不安に駆られていること、妻を支えたいという一心で出産に臨んでいることが示された。また、妊娠・出産に関わっていく中で、男性の役割や居場所のなさに苦しむことも示された。出血など出産のあまりの生々しさに、産後1年ごろまでトラウマとなってしまう可能性があることも明らかになった。男性に対して、医療従事者や産後の女性が声をかけること、男性自身の存在意義が大きかったことをきちんと伝えることの重要性が示唆された。(3)Pubmedを用いて、2000年以降に掲載された男性の産後うつに関する論文についてシステマティックレビューをおこなった。259件の論文が検索され、その内容を精査した結果、59件の論文がレビューの分析対象となった。レビューを通じ、男性の産後うつは2005年以降に注目されるようになった新しい課題であること、妊娠期から産後1年にかけて約10%の男性が精神的な問題に苦しんでいること、わが国では男性の産後うつの実態が十分に把握されていないこと、産後の男性を対象に質問票調査を実施する際の難しさなどが明らかにされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、平成23年度中より縦断研究を開始する予定であった。しかし、研究計画の立案に際して、我が国における先行研究の知見がほとんどなかったため、諸外国の先行研究のレビューおよび、対象者となる産後の男性への聞き取り調査といった、基礎的なデータ収集を実施する必要が生じた。それらの活動を実施したため、申請当初の予定に比べ、遅れが生じている。 平成24年度のできるだけ早い時期から縦断研究を開始するとともに、申請書の「研究が当初の予定通りに進まない時の対応」に記載した通り、2度目のフォローアップ調査の実施を断念して、産後3カ月時までのフォローアップを実施するように、計画を修正する。この修正により縦断研究の調査期間は短縮されてしまう。しかし、先行研究のレビューや質的調査の成果と併せて、本研究班の成果として公表することは、「男性の産後うつ」について多角的に評価することができ、今後のさらなる研究の実施に向けた重要な基礎となりえる、本研究班としての成果が大きく損なわれるわけではない。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は縦断研究の開始とそのマネジメントに注力する。研究計画書と質問票を研究代表者の所属機関の研究倫理委員会に申請する準備を進めている。調査協力施設としては、独)国立成育医療研究センター、昭和大学横浜市北部病院、東京都の助産所数か所などを想定している。必要に応じて、助産師の方に研究協力者として、対象者のリクルートなどの協力を得る方向で準備が進められている。現在、これ以外の施設とも協議は進めており、調査協力への賛同が得られる施設の選定を継続している。 大まかな流れとしては以下の通りである。・研究倫理審査委員会への申請・審査、調査協力施設との打ち合わせ:~2012年7月・ベースライン調査(産後数日後)の実施:2012年8~10月・フォローアップ調査の実施(産後3か月後):2012年11~2013年1月・データ分析・まとめ:2013年2~3月
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の研究費の一部を平成24年度に繰り越しをしたため、当初の計画よりも平成24年度に使用する予定の研究費は増額されている。平成23年度に実施したレビューの結果から、質問票の回収率が30%前後に落ち込むなど、回収率を高める工夫が極めて重要であることが示されている。 そこで、平成24年度の研究費は縦断研究の対象者の脱落を防ぐために、(1)データを自記式質問票による配布と携帯などで回答できるようにインターネットを介した質問票の配布の2つの方法を併用する、(2)質問票への回答に対するインセンティブ、(3)調査協力施設などでリクルートを実施する研究協力者に対する謝金の3つの方法に重点的に用いられる見込みである。 上記のインターネットによる調査のシステム構築に費用がかかるものの、そのほか高額の物品を購入する予定はない。なお、Pマーク(プライバシーマーク)を取得しているなど、セキュリティ対策を万全にしている業者に依頼する。
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