研究課題/領域番号 |
23792686
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
丸山 幸恵 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 助教 (50550696)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 訪問看護実践能力 / 在宅ケア / 人材育成 |
研究概要 |
訪問看護師は質の高い看護実践能力が必要とされており、、在宅療養者が安心できる療養環境を提供する訪問看護師の育成は急務である。そこで、成果を生み出す行動特性であるコンピテンシーに着目し、看護能力の高い訪問看護師の訪問看護実践能力の構成要素を明らかにする目的で、研究に同意の得られた訪問看護師14名を対象とした半構成的インタビューを実施した。対象者の概要は、30歳代5名、40歳代5名、50歳代4名であり、平均病棟経験年数は6.5±4.1年、平均訪問看護経験年数は8.2±3.6年であった。インタビューで語られた場面は、"判断ミスによる健康状態の悪化""看護観の押し付けによる拒否""看護師が認識するキーパーソンと家族内の力関係の不一致によるクレーム"などの急を要する対応であった。上手く関われた場面では"自宅での看取り"であったが、ほとんどの看護師は上手く関わった事例はないと答えていた。上手く看護ができている状況について、「本人に苦痛がなく穏やかに暮らしている」という"変化の無い日常"を挙げていた。このことは、看護師が"変化のない日常"を良い看護が出来ていることを認識していないければ、自己の看護に自信や達成感を抱きにくい状況にあることが推測される。語られた実際のケア行動については、希望に沿った生活を支援するために「家族で話し合うことを待つ」「療養者・家族が思いを整理することを待つ」という意思決定に向けた"静観"という行動、家族が落ち着いて生活できるように"先見を見据えた情報提供"、「ペインコントロールが上手な医師に教えてもらう」「自信がない場合スタッフに相談する」という自身を支える"自己サポートネットワークの構築"であった。訪問看護師の行動を分析することで、実践能力として療養者・家族に対する支援だけでなく、自己を支えるネットワーク構築が重要であることを提示することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コンピテンシーに着目した訪問看護実践能力の構成要素を明らかにするためのインタビュー調査の協力を依頼する時期が遅れてしまった。平成24年1月以降、訪問看護ステーションでは、介護サービス利用者へ診療報酬の改訂に関する説明および準備にて多忙を極めており、時期的に調査協力を得ることに困難を要した。そのため、調査へ協力が得られた時期も遅れ、さらにインタビュー実施時期も遅れてしまった。現在、得られたデータの分析を進め、訪問看護師のコンピテンシー構成要素を概念化している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
インタビュー結果の分析を早急に遂行するため、新たに質的インタビューに精通している研究協力者にスーパーバイスを受けいてる。分析の検討を重ね、訪問看護師のコンピテンシーの構成要素を明確にし、早急に学会発表ならびに学術雑誌等で公表する。平成24年度の研究計画では、訪問看護師のコンピテンシーの構造と訪問看護師の就業環境およびキャリア経験の関連性を明確にする質問紙調査を実施することになっている。インタビューから抽出されたコンピテンシーの構成要素と、先行研究の文献検討から訪問看護師に求められている能力を付加して、行動に焦点を当てた訪問看護実践能力を項目立てする。訪問看護実践能力の項目については、数名の訪問看護ステーション管理者に内容や言葉の表現について確認、検討してもらう。質問用紙には就業環境やキャリアを回答する項目を設け、質問紙を作成する。質問紙は、10名の訪問看護師にプレテストを実施し、項目内容に修正を加えてから本調査を実施する。本調査は、1月に実施する。A県B県は県看護協会へ調査を依頼し、C県では訪問看護連絡協議会に調査を依頼する。データ入力、分析には統計処理ソフトSPSSを使用し、分析を進める。分析結果は国内外の学会に発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年は、研究者が所属先を変更したことにより、研究打ち合わせや調査に必要な国内旅費が予定額より少額となった。今後は、インタビュー調査の分析や統計学的解析を進めるにあたってのスーパーバイス受けること、また研究成果を発表するための学会発表旅費に次年度使用額を計上する。また、質問紙を作成するにあたり、国内外における訪問看護師育成に関する先行研究ならびに関連図書の購入、また、人材育成を検討する上では認知心理学分野における知識獲得プロセス関する先行研究論文や図書により知見を広げることも必要であり、関連図書や文献を収集していく。質問紙調査の実施にあたり、消耗品として印刷用紙や印刷のためのトナー、封筒などの文具類、データーの保存媒体等を購入する。平成24年度の研究計による調査は郵送調査であり、調査用紙の送付ならびに調査用紙の返送に通信費として研究費を使用する。またデータ分析に必要な統計処理ソフトSPSSを購入する。
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