本研究の目的は、障害者自立支援法(以下、自立支援法)施行後の行政の保健部門に所属している保健師による精神保健活動における個別支援の実態を明らかにし、今後のあり方への示唆を導出することである。保健部門が担う精神保健活動の中でも、保健師の特徴である予防的対応を念頭に置いた、予防的意義が高いと考えられる個別支援に着目することで、より詳細な実態が明らかになると考える。 本研究は2つの調査により構成されていたが、支援対象者の了解を得られない等の倫理的配慮により、調査2を実施することができず、調査1のみとなった。【調査1】自立支援法施行後の保健部門の保健師による精神保健活動における個別支援の実態の把握 <方法>(1)調査対象者:市町村の保健部門に所属している保健師。(2)調査方法及び調査項目:半構成的面接による面接調査により、個別支援の内容、自立支援法施行前と施行後の違い、自立支援法があることによるメリット、個別支援における、自分が考える予防的意義等を聴取した。(3)分析方法:対象者ごとに、聴取した内容から個別支援の実態を整理し、予防的意義の観点から質的帰納的に検討した。個別分析の後、全体分析を行った。<結果>(1)対象者:市町村の保健部門に所属している保健師3名。(2)全体分析:『家庭訪問という手段を通し、電話や面接ではわからない本人の生活実態を把握する』『本人だけでなく、家族や関係者に対しても支援を行う』などの『予防的意義の高い個別支援』の実態があった。<考察>保健部門の保健師は、自立支援法だけでなく、法律や当該自治体の制度を熟知し、そのメリットを存分に生かしながら、個別支援を行っているという特徴があった。また話を聞くだけではなく、自分の目で実態を把握することを重視し、そのために家庭訪問という行政保健師ならではの手段を活かして、支援を行うという特徴も考えられた。
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