本研究では、研究代表者の提案する運動・口腔・栄養の総合的なプログラムを実施し、在宅高齢者の心身の変化を明らかにすることを目的とした。それらを踏まえ、地域に暮らす高齢者に対して実施される総合的なプログラムにおける効果的な内容と包括的な評価の方法を検討した。 研究に同意の得られた介護保険事業を利用する高齢者20名のうち、16名が分析対象となった。分析対象者は介入群7名、待機群9名で、その平均年齢は78.0(±7.4)歳と81.0(±7.5)歳だった。 総合プログラムの内容は、PT・OTによる運動機能向上のための集団・個別リハビリテーション、看護職・介護職による口腔機能向上のための体操、看護職による栄養状態の改善のための食に関する内容の会話を中心としたセッションとした。介入群が2か月間のプログラムを実施した後、待機群が同様に2か月間のプログラムを実施し、その結果を評価した。 調査期間を通してみられた変化は以下の通りだった。まず、運動機能・口腔機能について明らかな低下はみられず、ほぼすべての対象者が現状を維持することができた。栄養状態の変化についてもBMI値等の著明な変化はみられず、標準値の範疇での推移にとどまった。対象者の変化は、他者との関係性の項目において介入群と待機群間で有意な差がみられ、対象者およびスタッフからも高い評価を得た。食行動への積極性の向上を目的として実施したプログラムにより、食への意識の向上だけではなく、対象者間の交流の促進や仲間意識の形成が促され、自己評価・他者評価の向上へとつながった。さらに対象者の能動的なプログラムへの参加やその発展に関する発言も多くみられるようになった。 運動・口腔・栄養の総合的なプログラムは、実施内容が高齢者の潜在しているニーズと合致することで、より効果が高められることが示唆された。高齢者が主体的に参加できる方法の検討が求められる。
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