関節拘縮を既に発症している寝たきり高齢者を対象に、個々の拘縮の状態に適したポジショニングの実施を1年間実施し、関節拘縮の改善への効果を検討した。被験者は男性1名、女性4名の計5名で、平均年齢は84.5±7.8歳であった。関節拘縮の状態は、4名が屈曲拘縮、1名が伸展拘縮であった。日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会が提唱している関節可動域の最大値を100%とした時の各被験者の関節可動域の割合を算出し、初回から12か月までの変化について検討した。その結果、1年後には被験者全員の関節可動域が拡大した。最も変化が大きかったのはA氏で、右股関節外旋内旋運動は介入前と比べて77.8%も拡大した。また、被験者全員において右肩関節の屈曲伸展運動で30%以上の拡大が認められた。ポジショニングの効果は関節可動域の拡大だけでなく、オムツ交換にかかる時間が短縮するなど、介護者の時間的・身体的負担も軽減した。この結果から、ポジショニングの継続は、関節可動域の拡大、関節拘縮の改善に有効であると示唆された。一方で、C氏の右股関節外旋内旋運動と左股関節外転内転運動において、介入前よりも関節拘縮が悪化した。C氏は体調の悪化により、ポジショニング開始3か月よりリハビリテーションが中止となった。このことから、ポジショニングだけでなく、関節可動域訓練などのリハビリテーションを同時に実施していくことが重要であると考えられた。また、B氏の体圧測定を行ったところ、1年後の最高体圧が初回よりも低くなり、体支持面積が広がった。これは、ポジショニングの継続によって関節可動域が拡大し、関節拘縮が改善した結果、より広い面積で体圧分散ができるようになった可能性が考えられる。
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