研究課題/領域番号 |
23792697
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
寺西 敬子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (10345580)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 概日リズム / 認知症 / 高齢者看護学 |
研究実績の概要 |
認知症を持っている高齢者は不安が生じやすく、高齢者の不安を軽減しながらのケアが求められている。そのため高齢者の生活リズムに沿ったかかわりが必要である。さらに認知症高齢者の場合は関わりに反応してくれる時間帯及び時期、同じ関わりをしても反応がない時間帯及び時期があることを経験している。もし高齢者の概日リズムが明らかとなれば高齢者の不安の軽減、介護者・介護スタッフの介護負担の軽減、高齢者が反応できる時間帯にケアを行うことで効果が出やすくなるといった意義が考えられる。 しかし認知症を持つ高齢者の概日リズムは崩壊しているとされ、さらには研究も進んできているものの成人または健常高齢者で用いられている睡眠指標をそのまま認知症高齢者にも適用しているため実際の認知症高齢者の睡眠状況を示しているとはいえない。 そこで本研究では認知症を持つ高齢者の概日リズムはどのように変化していくのかを明らかにすることとした。 今回は生活環境・生活スケジュールをある程度一定にし、認知症の程度による概日リズムの違いを明確に抽出するために、対象高齢者を入所者とした。そうすることで認知症の程度以外の要因を同様にし、関わるスタッフと研究者によって高齢者の「対象者になることにともなう何かしらの不安等」を発生させないような見守りや早期発見、統一した測定を行うことができるからである。概日リズムの測定は広く使われている腕時計型の測定機器を高齢者の手首に24時間装着し、さらに施設スタッフによる観察日誌の記録を行った。 その結果、認知症が重度になるほど概日リズムは24時間周期から離れていき、さらに個人差も大きくなった。しかし全く概日リズムが無いという人は少なかった。一方でこれまでの睡眠指標では個人差、24時間から離れた睡眠周期を示すことはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は認知症を持つことで高齢者の概日リズムがどのように変化するのかを明らかにすることである。 そのため、いろいろな認知症の程度の状態で高齢者の概日リズムを測定した。しかもこれまでの多くの研究に比べて長期間にわたって24時間連続で測定している。このことによりやはり認知症が重度になると概日リズムは健常高齢者とは異なってきており、一般的な睡眠指標では表現できないリズムであることがわかった。それは概日リズムの崩壊ではなく、別のリズムが存在することも示唆されている。 上記のようなことが明らかとなっているので研究目的に対しておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに情報は収集した。 しかし一人一人のデータ量が膨大になってしまい、論文化がまだである。 今年度は報告書作成を行い、高齢者と家族、および研究協力してくれた関係者に結果を報告し、学会発表、論文投稿を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
認知症が重度になると予想以上に個人差が大きかったことから対象者を増やしたこと、施設入所者では認知症の軽度の人が少なく対象者を探す期間を延ばしたこと、これらにともない計画作成時よりもデータ量が大きくなり分析・論文作成まで昨年度中に終わらせることができなかった。このため報告書作成、学会発表、論文投稿にともなう使用が平成26年度に実施できなかった。よって平成27年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
報告書作成のためのデータ入力の謝金、報告書の印刷代等、報告書作成にかかわる出費。その後は学会報告のための費用・旅費、学会誌投稿のための費用。 これらに使用する計画である。
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