研究課題/領域番号 |
23792701
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長田 恭子 金沢大学, 保健学系, 助教 (60345634)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 自殺予防 / うつ病 / ナラティヴ・アプローチ |
研究概要 |
自殺企図歴のあるうつ病者にナラティヴ・アプローチを行い、語りの中から患者の認知的問題を明らかにするという目的に沿って、自殺企図により入院となったうつ病者を対象に、非構造化面接によるデータ収集を行った。面接はナラティヴ・アプローチの原則に従い、治療的な関わりを意識した。また面接前後に自記式質問紙PHQ-9を用い面接効果の指標とした。得られたデータは全て逐語録に起こし、感情が語られている部分や大切と思われる部分はプロセスレコードに起こした。対象者は男性3名、女性4名、計7名、面接回数は1~8回、平均3.4回であった。データをコード化、カテゴリー化した結果、研究者は、【対象者の発言を代弁・要約し受け止める】【対象者の気持ちをさらに追及し、話題を発展させる】等のマイクロカウンセリング的技法を用い、【自殺企図に至った理由や経緯について語ってもらう】【死に対する気持ちを語ってもらう】等、死についての率直な語りを聴いていた。さらに【対象者が自覚できるよう、できていることや現状を評価する】【対象者とは別の見方を伝える】【研究者が感じた疑問を確認する】ことにより、対象者の自己洞察、自己理解を促していた。また、対象者が自殺企図に至るまでには、「わかってもらえない」「話せる人がいない」という状況の中で不安や不満が蓄積しており、長期間にわたって「孤独感」と「不信感」を抱いていることが明らかになった。さらに、依然として「死んでいればよかった」「きっかけがあればまたやりたい」という強い希死念慮をもっていること、それと同時に「何とか生きていこう」という両価的感情が生じており、生と死の間で常に揺れ動いていることが明らかになり、再企図の危険性を示す結果となった。以上の結果は、自殺未遂者に対する看護者の関わり方の指針、うつ病者の心理や自殺予防対策を考察するための重要な資料となり、その意義は大きいといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は、協力施設の師長や担当医を通して対象者を確保し、面接を継続してデータ収集を行うこと、プロセスレコードを用いた分析を同時に進めるという計画であった。施設の協力は得られたが、対象が自殺企図により入院となったうつ病者という特殊性から、対象者の確保、面接の継続は容易ではなかった。そのため、これまでのところ7例のデータ収集が終了しているが、目標人数の10名にはまだ至っていない。また一人あたりの面接回数についても、8回できたケースは1例のみであり、残り6ケースは退院や対象者の希望により、1回~5回で終了している。対象施設をこれまで依頼していた一施設に限ると、今後も対象者の確保は困難であると予想されるため、現在対象施設の拡大を検討している。収集したデータについては逐語録を作成し、その中で感情が語られている部分や大切と思われる部分はプロセスレコードに起こした。そして現在は、語られた内容をコード化、カテゴリー化し、分析を進めている段階である。以上より、対象者確保の問題からデータ収集はやや遅れている。しかし、分析を同時に進めているため、対象者が確保できれば、平成24年度にその遅れは取り戻せると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、可能であれば新たな施設に協力を依頼し、対象者を確保する。そしてデータ収集を継続して行う。23年度・24年度で得られたデータを合わせ、自殺企図歴のあるうつ病者の認知の歪みや自殺念慮、自殺企図前・後の心理についてさらに詳細に分析を行う。分析結果については対象者に示し、メンバーチェッキングを行う予定である。さらに対象者の自殺念慮改善や思考の変化等から、ナラティヴ・アプローチの効果を検証し、自殺企図歴のあるうつ病者に対する効果的な看護介入の方法を明らかにする。そして研究成果をまとめ、論文作成、論文発表を行いたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初参加を予定していたが、諸事情により参加できなかった学会があるため、その分の旅費等を次年度分と合わせて、面接技法やナラティヴ・アプローチ、質的研究に関する学習会・講演会等への参加のための旅費、成果発表のための学会参加旅費としたい。また次年度は、面接内容を逐語録に起こす作業を依頼するための人件費、質的研究のエキスパートや精神科医師、精神科病棟師長、地域医療連携室師長等との検討会議のための会議費、専門的知識の提供、研究資料収集のための謝金、雑誌投稿料や印刷費等が必要となる。
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