研究課題/領域番号 |
23792701
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長田 恭子 金沢大学, 保健学系, 助教 (60345634)
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キーワード | 自殺 / うつ病 / ナラティヴ・アプローチ |
研究概要 |
本研究は、自殺企図歴のあるうつ病患者を対象として、ナラティヴ・アプローチにより治療的に関わり、うつ病者と看護師の相互作用をプロセスレコードを起こすことによって明らかにし、うつ病者の認知や感情の歪みから生ずる自殺念慮改善のための看護介入の効果を検証することを目的としている。 当該年度は、継続して対象者の確保、面接の実施に取り組んだ。その結果、11名を対象に面接を行い、データとすることができた。男性5名、女性6名、平均年齢は44.0歳、面接回数は1~8回で平均3.0回であった。自殺の手段は、大量服薬や縊頸、インシュリン注射、殺鼠剤服用等であり、11名のうち4名が自殺再企図者であった。そして得られたデータは全て逐語録におこした。現在は面接を継続し、同時に逐語録を熟読し、感情が語られている部分や大切と思われる部分を取りだし、プロセスレコードに起こす作業を行っている。そして対象者の変化や看護師との相互作用について分析する途中段階である。 自殺企図後間もないうつ病者を対象として、自殺前や自殺後の感情や状況について生の語りを聴いた研究はこれまでにみられない。また本研究では、可能な場合は面接を複数回行い、退院後も継続して行ったケースもあるため、一時的ではなく経時的に対象者の変化や看護師との相互関係、ナラティヴ・アプローチを用いた面接の効果を捉えることができると思われる。これらはうつ病・うつ状態から生じる自殺念慮や自殺企図を予防するための貴重な資料となるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、平成23年度を中心にデータ収集を行い、平成24年度はデータの分析を行う予定であった。しかし「自殺企図後のうつ病者」という対象の特殊性から、対象を確保することが予想以上に困難であった。該当者自体が少ないことや、自殺企図による入院後、状態が落ち着いて面接が可能な状態になった時には退院となるケースが多かったため、研究対象施設として考えていた施設のみでは対象者が思うように確保できなかった。そのような状況が続いたため、他の精神科救急の機能をもつ病院にも交渉し、対象施設を拡大しようと考え、各施設の倫理委員会の審査を受けたが、テーマが非常にデリケートであるため、対象者に及ぼす影響を危惧され、承認を得ることができなかった。そのため、結局は当初から対象施設として許可を得ていた一施設のみで対象者を確保することとなった。 以上の理由から、「研究の目的」の達成度はやや遅れていると考えられるが、すでに目安としていた10名以上の対象者からデータを得ることができた。今後は、現在継続中の対象者との面接を可能な限り継続することで、データを追加することができると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、追加でデータ収集を行いながら、結果の分析に取りかかっているところである。次年度は、分析を進め、うつ病者の自殺念慮や認知の変化、ナラティヴ・アプローチの効果、有効な看護介入方法について検討する。そして研究成果をまとめ、論文作成、論文発表を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用予定の研究費は、分析・結果のまとめ・論文作成の際に質的研究のエキスパートや精神科医師と行う打ち合わせ会議費、専門的知識の提供のための謝金、雑誌投稿料や印刷費、成果発表のための旅費等の経費としたい。
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