本申請課題では、3年間をかけて、精神障害の当事者、家族、精神科医療にかかわる看護師それぞれの捉える「リカバリー(回復)」についてインタビュー調査により探求した。3年目にあたる平成25年度では、前年に引き続き調査を実施し、分析を進めた。 インタビュー調査では、①近畿・関東地方において精神科看護師(精神科病棟、精神科外来、デイケア、訪問看護ステーションに勤務する者)を対象としたインタビューを行った。また、②近畿・関東地方において、統合失調症、気分障害、統合失調感情障害の診断を受け地域で暮らす人やその家族を対象としたインタビューを行った。これらのインタビューデータはテープ起こしを行い、精読の上、意味のある内容にコード付けをしていき、比較によって内容の類似性や関連を見出してカテゴリー化した。分析と並行しながら、その過程で見出された知見を、国際学会にて2回、国内学会にて1回発表した。 精神科看護師、精神障害者本人・家族ともにそれぞれの捉えるリカバリーは多様であり、それぞれの体験や他者との相互行為、学習によって形成されていた。看護師の多くは患者の姿や、長期間にわたる変化の学習から、治癒と対照して捉えていた。患者が長期入院していたかつての治療環境では回復の観念自体がなかったという語りや、患者の「管理され慣れた」意識や治療そのものがリカバリーを阻害するという語りも複数あり、行動制限や管理・代理行為への患者・医療者の順応がリカバリーへの姿勢と対極をなす面が示唆された。精神障害者本人の語りでは、リカバリーは、自身の病的体験や価値観と、他の当事者や医療者とのかかわりなどから形成されていた。 今後さらに分析を進め、論文での公表を行っていく予定である。
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