研究課題/領域番号 |
23792708
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡本 亜紀 岡山大学, 保健学研究科, 助教 (10413527)
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キーワード | 精神看護学 / 家族看護学 / パートナーシップ / リカバリー |
研究概要 |
本研究の目的は、人的環境が限られている入院環境での患者と援助者とのパートナーシップに着目し、従来、精神科地域医療・福祉の領域で用いられてきた、自分らしい生活と自分自身を取り戻すという回復の概念、すなわち「リカバリー」を看護援助へ適用させることである。 平成24年度は、パートナーシップ、リカバリーの質的分析の第二段階として、精神疾患や障害のある人(以下、本人とする)の「リカバリー」を目的とする地域生活支援プログラムを利用し、地域で生活する本人の家族の思いについて、質的記述的に分析して全体像を示した。その結果、家族と地域生活支援プログラムの支援者との援助的人間関係が明らかとなった。先が見えない将来への不安や生活上の困難を抱えながらも、支援者との関係の中で本人の気持ちに共感し、本人が希望する生活にかかわろうとしていく家族の思いの変化プロセスを示すことができた。さらに、本研究で用いた地域生活支援プログラム「ACT(アクト):包括型地域生活支援プログラム」における家族支援の効果が示唆された。 次年度以降は、この結果を用いることにより、本人と、家族や看護職などとのパートナーシップ形成に着目して具体的な支援方法を作成し、平成25年度に看護職を対象とした研修を実施して有用性を検討する予定である。このことにより、家族が本人の気持ちに共感し、本人が希望する生活へかかわるための具体的な支援方法が確立でき、本人の入院期間の短縮と本人と家族の生活の質の向上への貢献が可能と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた、パートナーシップ形成に基づくリカバリー構造の因果分析は未実施である。しかし、H24年度にインタビュー調査の質的分析により成果が得られたことで、現在既にパートナーシップ形成を目的とした援助的関係のための具体的な研修を企画している段階である。この研修は今年度実施可能な状況であり、平成26年度の最終年度のリカバリーモデルの適用効果と課題の明確化に向け、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
未実施のリカバリー構造の因果分析は、今年度に実施予定の介入研究の評価に際し、前後比較のため行う既存リカバリー測定尺度による質問紙調査として起用する。 今後、パートナーシップ形成に基づくリカバリーモデルの作成、現任教育研修の企画、実施していく。その効果について縦断的に調査をする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、リカバリーモデル作成と現任教育研修の企画において、地域生活支援プログラムに関する全国調査を行う予定であったが、全国調査を行うことなく可能となったため、この計上費が未執行となり、当該研究費が生じた。 モデルに基づいた研修の実施に際し、リカバリー先進国であるアメリカプログラムへの参加と、わが国を代表するリカバリー支援の実践者との意見交換に係る経費に補填し、さらに、現任教育研修の実施等に係る参加者の交通費、研修費等の必要経費に使用予定である。
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