リカバリーとは回復の概念であり、単に病気の回復だけでなく病気により失われた自分らしさと自分らしい生活を取り戻すといった内面的な状態を意味している。精神疾患や障害のある人がリカバリーするためには、重要他者とのパートナーシップが重要となることから、本研究では、精神科病院という制限された治療環境における、患者、家族、援助者のパートナーシップ形成に着目した、リカバリーモデルの構築を目的としたプログラム評価を実施した。 平成26年度は、病院看護師のリカバリー志向を高め、家族とのかかわりを促進させるためのプログラムの事前調査報告とプログラム実施後の成果報告をもとに、精神科急性期病棟へのリカバリーとパートナーシップモデルの適用と改良について検討した。事前調査では、病院看護師は、治療や病気の回復過程と症状のコントロールを重視しながらも、楽しみ、希望、対人相互的な関係形成能力、自己決定能力といった患者のストレングスを理解し、支持していることが示された。さらにプログラム評価では、統計学的に事前調査で示された看護師のリカバリー志向は有意に高くなり、変化の強さでは全項目が効果量大であった。家族とのかかわりでは、質的に【患者の早期退院につながる】、【本人と患者ともサポートしていくべき】、【早期から家族を含めて支援しなくてはならない】などの家族を一単位として捉えて支援する成果が得られた。以上の成果より、1)入院患者のリカバリーを目指した「患者の意思決定を重視する」こと、「趣味と余暇活動」や「症状コントロールと服薬への支援」に関する看護援助方法と、2)患者家族とのかかわりを入院中から促進させるための家族を含めたリカバリー支援の強化という2点を投入する根拠が得られた。本成果による精神科急性期病棟へのリカバリーとパートナーシップモデルの適用可能性は高く、入院患者の早期退院への具体策として有用である。
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