研究課題/領域番号 |
23792719
|
研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
田辺 有理子 岩手県立大学, 看護学部, 助教 (20448616)
|
キーワード | 看護学 / 暴力 |
研究概要 |
医療現場において、看護師は患者へのケア提供時に、患者から思わぬ暴力を受けることがある。このような暴力の影響は深刻で、看護師の自尊心を低下させ、患者への看護ケアの提供を阻害することが明らかになっている。しかし、暴力発生後の上司や同僚の指導・助言が看護師をさらに追い込む危険性があることは、ほとんど認識されていない。そこで本研究では、特に暴力の発生が多いとされる精神科において、患者から暴力を受けた看護師への有効な支援方法の構築を目的とする。 平成23年度は研究計画初年度として、暴力を受けたあとの同僚や上司の言動を含む看護師の体験、またその現状を踏まえて求める支援などについて、体験した事例に沿って6名の看護師へインタビュー調査を実施した。二次的被害となる体験があった一方で、支えられたと感じる体験があり、同僚や部下が暴力を受けた際に自身の体験に基づいて支援し、暴力の再発への対策を講じていた。 研究2年目の平成24年度は、前年度の調査結果をもとに、精神科病棟の看護師へのインタビュー調査を継続するととともに、暴力を受けた看護師を支援する立場としての看護管理者を対象としてインタビュー調査を実施した。調査内容は、暴力事例を把握するための工夫、暴力の報告を受けた時の対応、再発防止の対策、看護師への支援・指導の実際と、支援時の困難・工夫・課題・指導観などとした。 一般看護師、看護管理者という2つの視点だけでなく、病棟における立場や役割、看護経験によって、暴力が発生したあとの対応や支援の考え方が異なることが明らかになってきたため、経験の長い一般看護師や准看護師、管理者として主任、師長、看護部長、副院長など、立場や役割の違いによって対象を広げてインタビュー調査を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は本研究2年目として、初年度の調査結果をもとに対象者を一般看護師から看護管理者に広げて調査を実施した。調査を進めるなかで、病棟における立場や役割、看護経験によって、暴力が発生したあとの対応や支援の考え方が異なることが明らかになってきた。そのため、対象者の選定について、さらに条件を変えながら、今年度は13名のインタビューを実施することができた。したがって、今年度に計画した調査は予定通りに進んでいると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
暴力発生後の看護師の体験と、看護管理者が認識する支援を調査し、立場による認識の相違から問題点を明らかにし、効果的な支援方法を構築、検討する。 当初、暴力を受けた看護師の体験と支援する看護管理者の認識を順番に調査する計画であったが、両者の調査を並行して進め双方の認識を照らし合わせながら事例を重ねて調査を進めたところ、看護師個々の病棟での立場や役割、看護経験などによって、暴力の認識や、病院組織の支援体制の受け止め方が異なり、同僚や部下への支援についても違いがあることが明らかとなってきた。 そこで、研究最終年度の平成25年度は、対象者の職位や病棟における役割、看護経験など、分析の視点を広げてインタビューで得られた事例を検討する。 得られた知見を積極的に看護学関連の学会に発表し、臨床の看護師および看護管理者のほか専門領域の研究者と広く意見交換し、支援案の有用性と活用の実現性を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は本研究の最終年度となる。初年度に6名、2年目に13名のインタビューを実施し、19名分のインタビューデータを得たことから、平成25年度は充分なデータ分析を行い、得られた知見を積極的に関連学会に発表する。 したがって、分析のために本研究の背景となる精神科医療および看護に関する書籍・資料等を購入する費用が必要となる。また、分析段階で対象者への確認や追加調査の必要性が生じた際の旅費、看護学関連の学会に発表し、臨床の看護師および看護管理者のほか専門領域の研究者と広く意見交換するため、学会参加費および旅費が必要となる。
|