本研究では、医療現場において患者から暴力を受けた看護師への有効な支援方法の構築を目的とした。 平成23年度は、暴力を受けたあとの同僚や上司の言動を含む看護師の体験、またその現状を踏まえて求める支援などについて、体験した事例に沿って6名の看護師へインタビュー調査を実施した。二次的被害となる体験があった一方で、支えられたと感じる体験があり、同僚や部下が暴力を受けた際に自身の体験に基づいて支援し、暴力の再発への対策を講じていた。 平成24年度は、精神科病棟の看護師へのインタビュー調査を継続するととともに、暴力を受けた看護師を支援する立場としての看護管理者を対象としてインタビュー調査を実施した。一般看護師、看護管理者という2つの視点だけでなく、病棟における立場や役割、看護経験によって、暴力が発生したあとの対応や支援の考え方が異なることが明らかになってきたため、経験の長い一般看護師や准看護師、管理者として主任、師長、看護部長、副院長など、立場や役割の違いによって対象を広げてインタビュー調査を実施した。 平成25年度は本研究課題の最終年度であり、2年間の看護師および看護管理者への聞き取り調査を分析し、研究テーマである暴力を受けた看護師への支援について検討した。病棟における立場や役割、看護経験によって、暴力が発生したあとの対応や支援の考え方が異なっていた。特に病棟師長においては「暴力発生の把握」「暴力を受けたスタッフとの振り返り」「管理職への報告」「スタッフを取り巻く人々の調整」「対応した経験を活かす」などの対応の中で、看護師を気遣いながら状況を確認し、管理者と看護師の間に入って部下を守り、人的環境を調整し、さらに対応事例を自己の学びとして活用していた。
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