認知症介護者における高血圧や虚血性心疾患の発症率の高さ、免疫力の低下や死亡率が高い背景に介護に伴う精神的なストレスの関与が推察される。本研究においては、高齢期の認知症介護者が定期的な余暇活動を被介護者と共に自宅で行うことによる介護負担感の変化、介護負担感及び高血圧や虚血性心疾患などの発症に関連するアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、コルチゾールなどのストレスホルモンに与える影響について検討を行った。 対象は、外来通院中のアルツハイマー型認知症患者と65歳以上の高齢介護者であり、ランダムに介入群と対照群に分け、介入群には余暇活動プログラム(30分/3回/週)を被介護者と共同参加して行い、対照群は通常の介護のみを実施した。研究への参加の自由など倫理的な配慮を行った。 介入群では介入前と比較して介護負担の客観的指標であるZarit Burden Interview(ZBI)が有意に低下したが(p<0.05)、コントロールにおいてはZBIに有意な差がみられなかった。介入群、コントロール群において、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、コルチゾールなどは統計的に有意な変化がみられなかった。 主観的な介護負担感が介入群において低下したにも関わらずストレスホルモンの値の変動に反映されなかった背景として各介入群が主体的に選択した余暇活動が神経内分泌系に与える影響が考えられる。定期的な余暇活動が認知症介護者の介護負担感の低下に効果があることが示唆された。さらに、本研究の余暇活動の効果を正確に評価するためには非介護者、介護者の両者における長期的な追跡調査をする必要性が示唆された。
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