わが国では認知症に関する情報啓発が進められている。しかし受診や相談、サービス利用といった援助希求行動に至らずに対応が遅れ、本人や家族の負担が大きくなるケースも多くみられている。認知症では本人に自覚がなかったり認めようとしないことがあるため、最も身近な「家族」の援助希求行動が重要であり、それに関係する情報のあり方を検討することが必要である。 そこで本研究では、ある程度の社会資源が利用可能な1市内において、認知症高齢者を介護している同居家族9事例11名を対象とし、援助希求の状況と援助希求行動に関係する情報や知識の入手経路及び内容を問う面接調査を実施した(平成24年2~5月)。 対象者はテレビや新聞等から認知症の情報を得ていたが、具体的な事例以外では身内に当てはめず、受診には繋がっていなかった。インターネットや役所のパンフレットの情報では実際のイメージがつかめず行動できない場合でも、地域にアウトリーチした専門職からの情報提供によって援助希求行動に繋がっていた。また、店舗でも情報の授受がなされていた。隣人や友人、同僚からは施設の情報や早期内服の有効性を聞く一方で極端に負担の大きい事例の話も聞いていた。しかし、予防のために援助を求める、うちはまだよい方だとして援助を求めないなど、その受け止め方は事例で異なっていた。 調査を通して、認知症の啓発はなされているものの一般的な情報だけでは行動に至るのが難しいことがわかった。当事者が照合し、考えることができる事例や具体例の提示、個別性にあわせた専門職のアウトリーチ活動により、自己決定がなされて援助希求行動が促進する可能性がある。しかし最も援助希求行動が必要となる時期は、混乱や不安、負担が大きいために判断や自己決定が困難となり、行動できなくなってしまう。情報が活用され、援助希求行動に至るためには、これらの軽減も重要な課題となると考えられた。
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