高齢者施設等では高齢者の転倒や転落の事故を防ぐことは最重要課題の一つである。事故防止のために様々な対策は講じられているが、介護看護の現場における安全システムを検討する場合、介護看護職員の行動と安全システムの作動の両方を考慮する必要がある。 そこで、本研究では、小型無線端末を用いた所在確認システムを活用することによって把握する介護看護職員の訪室状況をもとに、歩き始めの転倒やベッドからの転落を起こしやすい高齢者(以下、転倒転落ハイリスクケース)の見守りのあり方について検討した。 独自に開発したパネル状センサを用いた臥床者の起上り等の動きを計測・記録するシステムを使用して、夜間に常時見守りが必要な高齢者を対象に数日間夜間体動状況記録した。また、深夜勤務中の介護看護職員の見守りの実態として訪室時刻と滞在時間を所在確認システムを用いて調査した。 その結果、夜間常に見守りが必要な高齢者の臥床中の体動は、就床後しばらく多くみられることや決まった時間帯に体動が増える傾向が確認できた。また、離床前には必ず体動が増加することが明らかとなった。一方、介護看護職員の訪室は、見守り対象者の起上り後となる場合だけでなく、体動がないときにも行われていることが確認された。さらに、介護看護職員の見守りを支援する安全システムとして、離床時だけでなく、眠りが浅くなり起上りの予備動作としての寝返り等の体動を感知し、通知するシステムの要求仕様を検討した。従来の見守りシステムに機能を追加したものであるが、低価格で導入可能であり、介護看護の現場における安全システムとして導入可能といれる。 転倒転落ハイリスクケースに対する見守りシステムとして、臥床中の体動状況から離床につながる可能性について見守り対象者個々の特性を踏まえて評価し、介護看護職員に伝えることで、対象者の安全と介護看護職員の負担軽減の両方が期待できる。
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