研究概要 |
本研究は、熟練外来精神科看護師が行っている自殺リスクのあるうつ病外来患者への看護行為を帰納的に明らかにすることを目的として、一定要件の精神科外来看護師8名へ半構造化インタビューを行い逐語録を作成しこれをデータとして、Grounded Theory (strauss et al.,2007)の継続的比較分析を用いて分析した。対象者は30代~50代、全員が女性だった。line-by-line analysisによりpropertiesとdimensionsを抽出してこれを用いてデータを概念ごとに分類し、類似している概念をグループにしてカテゴリ名をつけ、paradigmと条件/帰結matrixを用いてカテゴリ間の関連について検討し、分析に並行してtheoretical samplingによるデータ収集を行った。さらに中核カテゴリを抽出しストーリーラインを記述した。 結果として、看護師は、他患者が通常とりうる言動と患者との差異、患者自身の縦断的変化、家族と患者の認識の差異、に注目していた。特に、患者の疾病受容の程度が低い時や通常とは異なる患者の言動の変化があった時、患者の自殺のきっかけとなった出来事に患者が直面化した時には、自殺の危険が高いと考え、患者の言動の不一致や変化の詳細な観察をし、患者が応答可能であれば、不一致や変化の事実を患者へ伝え反応を観察し、応答不可能であれば、他職種間の橋渡しをした上で、他職種とともに入院の調整を行っていた。看護師は、患者との関わりはじめは、患者への関心を示しつづけ、患者の発語と表情変化の増加に伴い日常生活の余暇の使い方をさぐっていた。患者とは、ネガティブな発言をポジティブに言い換える、患者の健康的な言葉を選択してかえす、感情をゆらさないように関わっていた。
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