研究課題/領域番号 |
23792748
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研究機関 | 聖隷クリストファー大学 |
研究代表者 |
藤浪 千種 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 助教 (30455026)
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キーワード | 胃切除術後患者 / セルフマネジメント |
研究概要 |
昨年までの高齢胃切除術後患者を対象としたセルフケアに関するインタビュー調査で、患者は、食事摂取量の調節や食事に伴う不快症状のコントロールに試行錯誤しており、食事摂取量の自律的調節や食後に出現する不快症状・胃切除後症候群を予防するための知識や技術を必要としていることが明らかとなった。そこで、今年度は、胃切除術後患者が自律的に食事摂取量の判断や不快症状のコントロール方法を身につけることができるようなセルフマネジメントプログラムの開発をすすめていく予定であった。しかし、文献検討を進めるなかで行動分析学を理論的背景に用いたエビデンスの高い胃切除術後患者を対象としたセルフマネジメントプログラムを発見した。このプログラムは2006年に山口らが開発した「胃切除術後患者を対象とした食事摂取量の自律的調節支援プログラム」で、患者が入院中に、自身の身体の回復状況を判断しながら食事摂取量を自律的調整する判断基準を身につけることを目標とするプログラムであり、その有効性や安全性も検証され臨床現場での活用も行われている。そこで、今年度は、このエビデンスの高いプログラムに高齢者特有の問題への対処を組み込むことで、高齢胃癌患者へのセルフマネジメント支援の具体化をすすめようと、プログラム導入病院での実態調査を行った。調査の結果、プログラムの高齢者への活用は十分に可能であることが判明したが、プログラムの効果を得るためには患者が定められた食事摂取表の必要事項の記載ができることが前提となるため、認知力や理解力が低下した対象ではプログラム効果が得られにくいという課題が明らかとなった。理解力、認知力の低下を認める対象への支援を具体化することが次年度以降の課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は山口らが開発した「胃切除術後患者を対象とした食事摂取量の自律的調節プログラム」の高齢胃切除術後患者への適用を検討した。調査の結果、高齢患者への適用は十分に可能であったが、プログラム効果を得るためには患者が食事摂取表の記入ができることが前提条件となるため認知度、理解度の低下が認められる対象にはプログラム適用が困難なことが明らかとなった。 今年度は、当初の研究実施は計画と異なる調査の実施となったが、エビデンスの高いプログラムの応用の可能性が確認できていることから、研究はおおむね順調に進行していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
山口らが開発したプログラムでは、患者に「食事摂取表」の記載が求められる。食事摂取表の記入ができない対象に対しての対策を具体的に検討し、プログラムの活用可能性を探る。そのため、今年度もプログラム導入病棟における調査を実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
高齢患者のセルフケア状況から、高齢患者を対象としたプログラム開発を試みる予定であった。しかし調査を進める中で、高齢者には、高齢者特有の問題(嚥下機能等身体機能の低下、生活習慣の変容困難等)はあるものの、胃切除術後患者共通の課題としての食事摂取量の自律的調節や不快症状コントロールに関する知識や技術の獲得が重要な課題であることが明らかとなった。そこで、研究予定を変更し、既存のエビデンスの高い胃切除術後患者を対象としたセルフマネジメントプログラムに注目し、そのプログラムのもとで高齢患者へのセルフマネジメント支援を検討することとした。その結果、調査フィールド、必要経費等が当初の予定から変更となった。 今年度は、既存の胃切除術後患者を対象をしたセルフマネジメントプログラムを具体的にどのような形で活用すべきか、ということを既にプログラムを導入済の施設において検討する。プログラム導入病棟は限定されており、そこでの調査を継続することで、旅費・会議諸費用・謝金等が発生する予定である。
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