2008年8月、日本との経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシアから看護師・介護福祉士候補者が来日している。EPAによる外国人候補者の受け入れについては、受け入れ施設の努力によってか、これまでに表立った大きな課題等は見聞きしていないものの、依然として離職率が高い労働環境のままでは、日本人と同様、外国人候補者らも定着するとは考えにくい。しかも、自国とは価値観の異なる日本の職場で就労し、また、異文化に順応することが求められることで、日常的に精神的(異文化)ストレスを感じていることが予測される。 このような状況を背景に、本研究では、インドネシア人候補者らの従来の価値観が来日後、どのように変化しているか、またその変化と関連して、彼らの精神的ストレスの有無や程度を明らかにすることを目的とした。研究方法として、受け入れを公表している全国の医療・介護施設で就労するインドネシア人候補者を対象に匿名のアンケート調査を実施した。(有効回答者数71名)。 本調査結果と以前採択した研究課題(研究活動スタート支援「インドネシア人看護師の労働に対する文化的価値観と労働意欲を高める要因の解明」)の調査結果とを比較したところ、両者間において「娯楽」と「政治」、「趣味」の重要度について有意な差が見られることが分かった。また、候補者の精神健康調査の結果、16名(22.5%)の対象者において何らかの問題があるとの結果が得られた。今後分析を更に深めていく予定であるが、精神健康調査の総得点を従属変数、対象者の属性(年齢、性別、出身地、婚姻状況、日本での生活の満足度等)職業関連の項目(看護師経験年数、現施設での就業年数、資格取得の有無等)を独立変数とする重回帰分析を実施したところ、「日本での生活への満足度」と「資格取得の有無」が有意に関連していることが明らかになった。
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