高齢者が住みなれた地域で安全に生活を営むためには、市や地域包括支援センターと地域住民による見守り組織が、情報を共有しながら適時対応することが必要である。しかし、2005年の個人情報保護法の施行以降、情報共有が困難な状況があった。 そこで、本研究は大阪府下の地域包括支援センターに勤務する専門職へのインタビュー、大阪府下247か所の地域包括支援センター専門職へのアンケート調査、地域見守り活動を行っている者へのグループインタビューおよびアンケート調査、個人情報保護条例を制定した地域の視察と専門職へのインタビューを行い、地域見守り活動に従事する者と活動を支援する専門職の双方から情報の共有状況を調査し、課題解決のためのプログラムを作成したものである。 個人情報保護法制定から10年が経過した現在、共有による法律違反となるリスクを負うよりも情報共有だけでなく見守り活動を縮小した地域がある一方、情報共有のための研修など新たな工夫を取り入れ、情報ネットワークを発展させた地域もあり、情報活用には地域差が開いていた。 活動を縮小した地域では、活動者と専門職が別々に情報収集しており、時間的・体力的負担と、タイムリーな介入への課題があった。また、情報ネットワークが発展した地域では、拒否や訴えられることの怖さ、人権尊重への疑問など、これまでの研修で解決されていない課題があり、活動者の精神的な負担と継続への意欲の減少につながっていた。そこで、調査結果を用いてグループワークを取り入れた研修プログラムを作成し、その反応を調査した。 個人情報共有の課題を、活動者と専門職の双方から調査して作成した研修プログラムは、時間的・体力的・精神的負担を軽減させ、情報ネットワークに参加・参画できる人材育成であり、地域見守り活動の継続につながる。それは、高齢者が住みなれた地域で安全に生活を営める地域づくりにつながっていた。
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