未就学児を育児中の親のワークライフバランスと精神健康度について988世帯に質問紙調査を実施した。研究参加協力が得られた694名(男性267名、女性427名)の回答を分析した結果、女性では専業主婦の精神健康度が就労女性よりも低く、就労女性の中でも正規職員より非正規職員・パートの精神健康度が低い実態が明らかになった(p<0.05)。また男性では、就労している妻の夫が、専業主婦の夫より有意に精神健康度が不良であることが明らかになった(p<0.05)。さらに、精神健康度の良好さは男女ともにSOCの高さが関連していた(p<0.001)。精神健康度とSOCの関連は他の先行研究からも同様の報告がされており、SOCを高める要因を検証することは、精神健康度を良好に保つための方策につながることが期待される。しかし、SOCを高める要因については未だ解明されておらず、本研究期間に実施した調査の結果では、男性は良好な職場環境、女性は信頼感(基本的信頼感や近所の人、友人への信頼感)、学歴、経済状況がSOCの高さと強く関連した結果が得られ、SOCの高さの関連要因に性差を認めた。そのため、SOCを高める要因も性差を考慮して検討する必要がある。 そこで今年度は、女性のSOCを高める要因を探るために、子連れで活動するNPO団体に所属する未就学児を育児中の母親を対象に、育児に対する自己効力感とSOC、精神健康度の関連について質問紙による調査を実施した。平成27年度に新規所属した12名中、調査協力が得られた11名の回答を分析した。その結果、精神的健康度は比較的良好な集団であったが、SOCの高さと精神健康度の良好さには有意な相関関係を認めた(p<0.01)。縦断調査は継続中であり、SOCの推移とその変化の要因を分析する。
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