研究課題/領域番号 |
23800003
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
片岡 太郎 弘前大学, 人文学部, 特任助教 (80610188)
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キーワード | 出土木材 / 保存処理 / ポリエチレングリコール / トレハロース / 含水率 / 保存科学 / 文化財科学 / 考古学 |
研究概要 |
平成23年度は、出土木材資料の収集、樹種同定および腐朽程度の算出に係わる基礎的な実験を行なった。資料の収集は、大館市教育委員会から茂木屋敷遺跡(近世・秋田県大館市)出土木材約30点、弘前市教育委員会から油伝(1)遺跡(近世・青森県弘前市)出土木材約100点の提供を受けた。これらの出土木材の樹種同定を約90%について行なった結果、スギ材が大半を占めた他、広葉樹材が若干認められた。腐朽程度は、出土木材にどれくらいの水が含まれているか(含水率)を知ることで判断でき、含水率が大きいほど腐朽の進行が著しい。資料の水中重量と空中重量(それぞれ1週間飽水処理後)を使う従来法によって含水率を測定した結果、スギ材は約330~400%、広葉樹材では約400~1200%であった。これらの従来法から求めた値は、本研究における新手法である空中重量と見かけ体積から計算した値と正の相関が示された。ただし、従来法と新手法の値は、絶乾法で測定した値とも相関があったが、±30%以上の違いが認められた資料もあった。 次年度に先立ち、以上の資料を使って、含浸処理実験を開始した。含浸処理は、処理薬剤にポリエチレングリコール(平均分子量4000)またはトレハロースを使い、水系により行なった。スギ材(平均含水率350%)について、処理薬剤が10%から始めて40%(重量比)まで含浸を行なった結果、処理中のスギ材の空中重量が恒量に達するまでの時間が、いずれの処理濃度においても、トレハロース含浸処理の方がポリエチレングリコールを使った場合よりも2倍程度短いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度における研究計画は、(1)実験資料の収集、(2)資料の樹種鑑定、(3)腐朽程度算出の新手法の試み、(4)含浸実験であった。(1)および(2)についてはほぼ完了しており、(3)についてはさらなる検討が必要ではあるが方向性が見出せている。(4)については、完了率は30%であるが、当初の予定通り平成24年度も継続して行う予定である。以上から、研究の目的の達成度はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は継続して含浸実験を行うとともに、腐朽程度算出の新手法の理論的裏付けを行う。さらに、出土木材の最終工程である乾燥(自然乾燥・真空凍結乾燥)を行うことで、含浸処理から乾燥完了までの一連の工程について、おおよその完了時間予測について理論モデルを作って行う。
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