水浸出土木材の含水率は、処理完了の目安や処理後の評価に使われる。現在、含水率は、出土木材の空中重量、水中重量の測定、および細胞壁実質の密度から計算するのが通常である。水中重量は、木製品を液中で吊るして測定する方法であるため、技術的な手間を要するだけでなく、大型の木製品には適用困難な方法である。本研究では新たに空中重量、最大膨潤時の見かけ体積、木材細胞壁実質の密度から計算する手法を模索した。ポイントは、空中重量(A)=木材実質重量(V*r0)+最大膨潤状態の出土木材に含まれる水の重量((V-(V*r0/R))/D)として、出土木材の全乾密度(r0)を推定することである。新手法は、従来法と正の相関が認められ、おおよその含水率値に見当を付けるためには簡便な方法であるもの考えられた。 低湿地遺跡から大量に発見される水浸出土木材の保存処理を行う上で、処理薬剤の含浸処理後に水系における真空凍結乾燥処理を行うことが確実で効率的であるものと考える。しかし、真空凍結乾燥処理における予備凍結時の水溶液の体積膨張による出土木材の寸法変化が懸念された。そこで、出土木材の凍結速度が及ぼす寸法安定性への影響を知るために、予備凍結温度を従来用いられている-40℃と-80℃に設定し、凍結前後の膨張率を比較検討した。結果、ポリエチレングリコール含浸後の試料において、-80℃で急速に凍結させた場合、繊維方向では膨張したが、接線方向と放射方向ではほとんど膨張せず、-40℃で凍結させた試料よりも良好な寸法安定性が得られることがわかった。
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