研究概要 |
今年度は主に全域木混雑度問題の計算理論的難しさ及び容易さに焦点を当てて研究を行った.はじめに,固定パラメータ計算量の研究を行い,全域木混雑度問題が非常に制限されたグラフに対しても固定パラメータ困難であることを示した.(ここで,パラメータは混雑度.)つぎに,上述の制限を少しでも強めると固定パラメータ容易となることを示した.これらの結果は辺が比較的少ない疎なグラフに対するものである. 固定パラメータ計算量の次に,古典的な計算量の研究も行った.この研究では,全域木混雑度問題は,非常に密な辺が多いグラフに対して難しい(NP困難である)事を示した.ここで扱ったグラフは,スプリットグラフやチェイングラフと呼ばれるグラフで,それらは完全グラフや完全2部グラフという非常に単純な構造をしたグラフに近いものである.特に,チェイングラフ対しても難しいようなグラフ上の問題はほとんど知られておらず,この結果は全域木混雑度問題が非常に難しいものであることを表しているといえる. 全域木混雑度問題の困難性に対処するために,指数時間の厳密アルゴリズムを提案した.素朴なアルゴリズムとして,全ての辺集合を調べるという方法がある.我々は多くの非自明な事実や指数時間アルゴリズムの最新技術を用い,素朴な方法より劇的に速いアルゴリズムを提案した. その他に,ある性質を満たす木の列挙アルゴリズムなども提案した.今後,それらの列挙アルゴリズムの全域木混雑度問題への適用が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
問題の計算理論的難しさについて整理できてきたので,今後は難しさに対する対処,および,簡単になる場合の発見などが課題として挙げられる.また,理論的保証のある近似アルゴリズム,および,理論的保証はなくても高速かつ「そこそこいい解」を求める発見的手法の開発も課題である.特に,タブーサーチ法や遺伝的アルゴリズムなどのメタヒューリスティックの適用を試す事を計画している.
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