本年度は、昨年度までの研究の成果をベースとして、その技術の高度化を図った。昨年度までの研究成果から、ネットワークにおけるスループットや遅延、ジッター、パケットロス率などの通信品質(QoS:Quality of Service)の保証とセキュリティ向上を両立するための課題が明確化された。そこで本年度は、この問題を解決するためにゲーム理論を用いてWLAN(Wireless Local Area Network)にいてQoSを考慮しつつとセキュリティを確保するための技術を提案した。本提案では、ネットワーク内の各ユーザが要求するQoSとセキュリティレベルをWLANのアクセスポイントに送信し、アクセスポイントはゲーム理論を用いることで各ユーザの要求を考慮しつつ通信の制御を行う。また、解析結果より本提案では、ゲーム理論における解の一つであるナッシュ均衡が存在することが示された。また、ネットワーク上の各ユーザにとってこのナッシュ均衡が最適な状態であることが示された。 提案アルゴリズムの安定性や動作性能については、まず始めに数学モデルや数値計算などによる評価を行い、設計に問題がないかを確認した。次に、詳細なシミュレーション実験によって提案技術を評価することによって、提案技術の有効性を客観的に示した。 さらに、この研究成果について国際会議において発表を行った。発表は当該分野で世界的な影響力が大きい米国電気電子学会(IEEE)が主催する最大級の会議であるInternational Conference on Communications (ICC 2012)において行った。本発表を通じて研究成果を世界的に発信した。
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