昨年度に確立したはしご型構造の設計指針をもとに,引き続き「ねじれ・曲げ」の要素を持つ各種構造を作製した.具体的には,はしご型構造を曲げた概形を持つ「正方形構造」の作製,および,はしごの手すり部分に位置する二重らせんの位相差を利用してねじれを作る「らせん型構造」を複数作製した. 昨年度,これらの構造を原子間力顕微鏡(AFM)で観察したところ,「らせん型構造」のほうは予想した形状とは異なるかたちで観察された.そこで,この結果がAFM観察手法の制約によるものか,それとも設計指針自体が不完全なものであったのかを確認するため,本年度は透過型電子顕微鏡(TEM)でこの「らせん型構造」の詳細な観察を行った.雲母基板上に静電的にDNA構造を吸着させることで観察を行うAFMと比較して,TEMによる観察では,三次元構造がより溶液中本来の形状で見えると予測された.米国バーバード大学による実験手法やノウハウの提供のもと観察をおこなった結果,設計どおりのらせん型構造が確認できた.このことから,設計自体に問題があるというよりも,基板上にサンプルを吸着させるAFMの観察プロセスが原因で構造が変化したことがわかっただけでなく,溶液中ではほぼ設計通りの構造が作製できていることが実証できた.しかしながら,さらにこのねじれの頻度を変更したサンプルも観察したところ,頻度が高い構造は電子顕微鏡の観察でもより裂けやすい傾向にあることがわかった.これが観察プロセスに依存するものなのか,それともこの設計指針に限界があることを示す結果なのかについてはまだ未解明である.今後はさらに異なる構造を観察することでこの原因を明らかにし,状態遷移前後での構造を確実に予測できるようにする.遷移前後の構造が観察できることを確認した上で,当初の計画にある状態遷移機構を今回の構造に実装していく予定である.
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