本研究では,実社会への翻訳リペアの適用のために,利用場面に最適化した翻訳リペア支援を行うことを目的としている.平成24年度は,翻訳リペア支援手法として,利用分野に最適化した言い換え文生成手法の構築および評価(STEP 1)を行い,構築した手法をもとにした,翻訳リペア支援システムの構築(STEP 2)に取り組んだ. まず,平成23年度に調査した医療分野における翻訳の問題点をもとに,医療分野において求められる,翻訳結果の必要要件の整理および現状の機械翻訳がどの程度必要要件を満たしているかの確認を行った(STEP 1).現状の機械翻訳においても,ある程度医療分野で利用可能な翻訳ができていることがわかったが,医療分野において求められる,原文の意味が過不足なく伝達可能かを確認する必要があることがわかった. さらに,これまでに申請者が構築してきた,類語を用いた言い換え文自動生成手法をもとに,翻訳リペア支援システムの構築に取り組んだ(STEP 2).従来の手法は,機械翻訳システムが単語の翻訳に失敗している場合には,翻訳精度の向上した言い換え文を生成できる.一方,単語以外の部分に失敗の原因がある場合には,翻訳精度の向上が困難である.そこで,単語以外の問題点を抽出する仕組みを構築した.また,人間による翻訳リペア作業の適切さを保証するための仕組みとして,複数翻訳機を用いて精度の不一致を検出する仕組みの検討および構築を行った.
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