人工心臓の駆動様式(拍動流と連続流)が循環生理学的に生体へどのような影響を与えるかということを明らかにすべく、体内埋め込み型の超小型顕微鏡装置を開発し、微小な末梢循環における血流の観察・影響解析を行う。連続流・拍動流のどちらも駆動可能な完全人工心臓である完全人工心臓を用いて実験を行うことで、個体差の影響のない実験を行うことが可能となる。昨年度では、超小型顕微鏡装置の基礎的な開発を行い、低倍率で全体像を観察可能なものから高倍率で赤血球を観察可能な装置まで3種類の装置を開発した。また観察装置に生体医療材料であるポリグリコール酸の不織布を足場として組み込み、そのスキャッフォルドに血管を新生させることで、安定した視野と解像度を確保することを試みた。短期慢性動物実験を3度行った。最長121日間完全人工心臓で駆動し、その間観察を続けた。人工心臓を埋め込んだ動物には事前に観察装置を埋め込んでおき、通常心臓と機械的人工心臓での観察比較を行った。観察装置は最長140日間埋め込みを行って、その間継続して観察を続けた。観察装置に組み込んだスキャッフォルドには血管が新生することが確かめられた。また、スキャッフォルドに新生した血管を観察することで、体動等に影響を受けることなく安定して血管を観察することができた。駆出波形や運動負荷による微小循環への影響を長期的に数日間に分けて観察し、解析を行った。観察装置のスキャッフォルドに新生した生体組織を実験後に摘出し、光学顕微鏡を用いて組織学的に評価を行った。
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