研究概要 |
本研究の目的は,出現形に対する述語項構造解析技術と,受身形・使役形の格構造と原形格構造を対応付ける知識を組み合わせることにより,受身・使役形で出現した用言のゼロ照応解析を含む原形格構造の高精度な解析である.本年度は,特に大規模格フレームに基づくゼロ照応解析に識別モデルを導入することによる出現形におけるゼロ照応解析の精度向上,および,出現形格フレームと原形格フレームの格構造の対応付けの予備的検討に取り組んだ. まず,出現形におけるゼロ照応解析の精度向上のため,大規模格フレームに基づくゼロ照応解析に識別モデルを導入した.照応関係が付与された比較的小規模なコーパスから得られる構文的な手掛かり,および,大規模テキストから自動構築した格フレームから得られる語彙的手掛かりを素性とし,各手掛かりの重要度を推定することにより,ゼロ照応解析の精度が向上することを示した.また,格の種類ごとにどのような手掛かりが重要となるかの傾向を明らかにした. さらに,出現形格フレームと原形格フレームの格構造の高精度な対応付け方法の予備的な検討のため,対象を明示的に格助詞を伴なって出現した格要素に限定し,自動構築した格の対応付けと,実際の用例の比較を行なった.その結果,格構造の対応付けの種類数は限定的であること,格同士の類似度だけでなく格の出現の分布等も有力な手掛りとなるということが分かり,これらの知見を利用することにより出現形格フレームと原形格フレームの格構造の対応付け精度が向上することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構文解析システムKNPに付属する形で公開されている格フレーム辞書を用いて原形格構造解析システムの構築を行ない,また,京都大学テキストコーパスを用い,自動構築した格構造の対応付け知識の評価を行うなど,おおむね当初の計画通り研究を実施できているため.
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今後の研究の推進方策 |
まず,出現形と原形の格の対応付け知識の高精度化,および,出現形格フレームの選択の高精度化を行い,その分析を基に格フレーム構築自体の改善を目指す。続いて,副助詞を伴なった出現した格要素など格解析が必要となるものや,格要素が省略されておりゼロ照応解析が必要となるものに対象を広げ,高精度化した出現形と原形の格の対応付け知識を用い,原形格構造の高精度な推定システムの構築を行う.
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