研究課題/領域番号 |
23800026
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
谷川 久 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40373328)
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キーワード | 脳機能計測 / ブレイン・マシン・インターフェース / 皮質脳波法 / 色覚 / 顔認知 |
研究概要 |
本研究では、霊長類の色や顔の知覚および想起の脳内メカニズムを統合的に理解することを目的としている。そのために、マカク属サルの大脳皮質に広範囲に分布する色や顔の情報処理にかかわる脳部位の活動を、皮質脳波(ECoG)法を用いて記録し、それらの部位がどのように相互作用して、色や顔の知覚と想起が行われているのかを調べる計画である。また、それらの脳部位が解剖学的にどのように連絡しているのかを明らかにすることも目指している。ECoG法は、皮質上の広範囲の脳活動を高い時間分解能で同時に計測することを可能とする比較的新しい脳神経科学の手法であり、脳内において瞬時に行われる複雑な情報処理過程を明らかにする目的に適している。またECoG法は、近年、脳と外部の機器を結ぶためのコミュニケーション技術であるブレイン・マシン・インターフェイスの中核を担う技術としても注目されており、脳神経科学の新たな地平を切り開く大きな可能性を持っている。 23年度には、二匹のサルにさまざまな色のついた視覚刺激を一定時間見続けるようトレーニングした。また同時に、ある白黒画像から特定の色を想起し、その想起した色に基づいて色図形を選択するトレーニングも行った。トレーニングの結果、サルはそれぞれの課題を遂行できるようになった。一匹のサルにはすでにIT野にECoG電極が設置していたので、その電極から、課題遂行中の脳活動を記録した。その結果、特定の色の視覚刺激を見せたときに選択的に生じる脳活動をECoG電極から計測することができた。特定の色を想起中の脳活動の記録も行い、現在解析中である。 24年度には、二匹のサルのIT野、V4野、前頭前野にECoG電極を設置し、それらの脳領野からの脳活動計測が可能となる。また顔を含む視覚刺激を知覚・想起するようサルをトレーニングする計画である。以上の結果から、霊長類の色や顔の知覚および想起の脳内メカニズムの理解が進むことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画にあるとおりに動物のトレーニング、ECoG電極の設置、データの記録・解析、二頭目の動物の準備が遂行されたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究実施計画に従って研究を遂行する。二頭目の動物への電極設置を予定しているが、もし手術がうまくいかなかった場合は、三頭目の動物をすみやかに準備する。実験結果によっては、さらに追加実験が必要となる可能性がある。その場合は、神経軸索トレーサーの注入は延期し、ECoG電極からの記録の結果だけで、論文を発表することを検討する。
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