研究概要 |
本研究の目的は,バーチャルリアリティ(virtual reality VR)技術を高次脳機能のリハビリテーションに利用することの有効性を明らかにすることである.タッチパネルで簡単に操作できるバーチャル商店街での買い物課題(VR検査)を開発し,脳損傷者および各年代の健常者を対象に施行した.平成24年度には主として以下の研究成果を得た.(1)VR検査は脳卒中・頭部外傷患者の高次脳機能評価に適用でき,その成績は日常記憶や注意と関連することが示唆された(岡橋ら,2012).また,健常の高齢者と若年者の比較においては正当数やヒント使用数に有意差はないが,高齢者では所要時間が有意に長かった(Okahashi, in revision).(2)失語症患者は絵や平仮名を多用した簡易版VR検査を遂行可能であり,その成績は注意や遂行機能と関連することが示唆された.患者群においては,課題遂行中に自発的に買い物リストを確認することが困難であった(小嶌ら,2012).(3)その他,二重課題や意味的条件の異なる複数語から成る単語リストの自由再生課題施行中の前頭前野の脳賦活について,近赤外分光法(near-infrared spectroscopy NIRS)を用いて検討を進めた.VR技術を用いた評価・訓練における提示課題の選定にあたり,言語要素および前頭葉に対する負荷は重要な側面として考慮される. 研究成果は六編の国内・国際学会発表,二編の論文として発表した.本年度はバーチャル環境を用いた高次脳機能リハビリテーション機器の臨床応用に向けた可能性が示された.
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