本研究では動作や知識の作りこみによらず,ロボットの経験による自律的な知識・行動の獲得を目標としている.これにより,未知環境でも適応的に行動生成が可能なロボットの実現に貢献できることが期待される. 本年度はロボットの動作経験に基づく自己身体発見,環境知覚特徴量の自己組織化と道具使用動作応用について研究をした.ロボットの知覚・行動生成は再帰神経回路モデルであるMultiple Timescales Recurrent Neural Networkを用いて構築した.成果として,(1)ロボットが行うランダム動作に対して予測可能性に基づく自己身体領域を発見し,(2)物体操作経験から転がす・倒すなどを表現する物体特徴量を自己組織化し,(3)道具使用経験から未知道具特性を推定し、目標タスク(物体引き寄せ動作)を遂行するモデルを構築した.本研究成果はロボットの発達的な知覚・行動生成機構を構築することと共に,ロボットを用いた構成的なアプローチに基づく人間理解に通じる研究を目指している.本年度の成果は人間の幼児の発達過程を対象にロボットの学習系を構築しており,上記の目標に対する基盤的な研究になっていると考えられる. 本年度はロボットの動作生成を主体に研究を進めてきたため,効率的な学習モデルについてはまだ議論ができていない.今後は学習モデルの改良を行い,より複雑な環境にも適応的に行動生成が可能なモデルへと展開していく予定である.
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